ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「画家モリゾ、マネの描いた美女 名画に隠された秘密」

150616 原題:Berth Morisot 仏 100分 [監]カロリーヌ・シャンプティエ(「ハンナ・アーレント」)

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印象派時代に生きた女流画家を主人公にして、話題作「ハンナ・アーレント」を撮った女流監督が、あまり知られていないベルト・モリゾマネの関係などを中心に描いた作品。

フランスのほぼ中央に当たるシェール県のブールジュに上流階級の3女として生まれたベルトは、上流階級子女の嗜みの一つとして父親から、すぐ上の姉で大の仲良しであるエドマともども絵を習わせられる。二人とも、持って生まれた才能なのか、師であるコローの教え方がよかったか、めきめき頭角を現す。

その後、パリへ転居、おしゃれな16区のパッシーに住み、ルーブルにも模写のため、足繁く通う姉妹。そこで、マネと知り合う。やがて、ル・サロンにしばしば入選する腕前に。

既に既婚者のマネとの交流は奇妙なものだった。エドマに興味があるようなそぶりで、自分の絵のモデルには妹のベルトを強く希望する。そして、何作かのモデルに描かれたことは歴史的な事実である。⬇︎

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ベルトとマネは、その後も恋愛感情は互いにあったようだが、付かず離れず状態。そうこうするうちにエドマは別の男性と結婚。この辺り、あまり描写がなく、よく分からない。じれったいシーンが続く。

さらに絵画に没頭していくベルト、やがて同時代の、後に印象派画家と呼ばれるモネ、ルノアール、ドガらと親しくなり、パリのカプシーヌ大通りにあるナダール写真館で1874年に開催された第1回独立絵画展(後に印象派絵画展)に出品、世間にも知られる存在となる。

マネは、彼らとは距離を置き、独自の路線を行くことに。そして、弟ウジェーヌがベルトに求婚、モリゾとマネにとってよかったのかそうでなかったのか。報告を聞いた二人の表情が実に微妙。

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上の年表には記載がないが、モリゾは1841年1月生まれなので、ルノワールとほぼ同世代。

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残念ながら、知っている女優は皆無。モリゾ役のデルテリムさん、この役柄にはぴったりだが、表情が謎めいていて、ほとんど感情が読み取れない。そこを敢えて狙ったのか、シャンプティエ監督。

私事ながら、パリにいる頃、当時まだオルセーがホテルとして使われており、印象派の作品はコンコルド広場に面するジュ・ドゥ・ポームに展示されていた。無料となる日曜はよく見に行っていたが、ベルト・モリゾという名前を知る前に好きになったのが、彼女のこの絵、「ゆりかご」である。

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出産祝いのカードとして、よく使わせてもらった。

ところで、この邦題はあまりにもひどい!日本人にあまり馴染みがない画家だからだろうが、これだけ説明を加える必要があるのだろうか。原題はシンプルにBerth Morisotであることを考えると、少々やりすぎ感が否めない。

何年かぶりに恵比寿のガーデンシネマへ出かけたが、改装後、大変立派な映画館に生まれ変わった。特に椅子が快適そのもので、今後ひんぱんに来たい映画館だ。

#45 画像は、本作のオフィシャルサイト、及びALLCINEMA on lineから