140711
木版画を多く含むが油彩主体で全134点は見応えがある。昨年10月、ここで開催された「印象派と世紀末美術展」で、ヴァロットンの木版画のかなりの作品が展示されたが、当館所蔵のものがいかに多いかが分かる。
副題の「冷たい炎の画家」というのが、イマイチよく分からないが、恐らくゴッホに対比させた言葉だろうか。確かにゴッホの作品に比べれば、少し引いた感じで、サラッとした筆致が窺える。風景画や人物がにいいものが多い反面、後半急に増えて来るヌードは、正直余り好きな作品は多くない。それより寧ろ木版画に面目躍如たる気風が窺えるように感じた。
「オルセー美術館発 待望の世界巡回」と銘打っていて、東京の後、10月から来年1月まではパリのグラン・パレ、その後は、アムステルダムのゴッホ美術館で開催が決まっている。まったく同じ内容にするか知らぬが、そうなれば、当館所蔵のこれら木版画が大量に彼の地へ運ばれることに。
監修者のメッセージを以下に抜粋。
1865年にスイス、ローザンヌに生まれ、1925年にパリで没したヴァロットンは、2つの国の間で、世紀を跨いで活動した画家。ヴァロットンは、ボナール、ヴュイヤールやドニとともに活動し、同時代のポスト印象派画家であるゴーガン、ゴッホ、セザンヌ、さらにフォーヴやキュビスムの芸術家たちとも交流を深めた。しかし、唯一参加した芸術集団「ナビ派」でも「外国人のナビ」と呼ばれたように、前衛芸術の渦中にいながらも独自の道を辿った。 この風変わりな画家の様式は、なめらかで冷ややかな外観が特徴。洗練された色彩表現、モティーフを浮かび上がらせる鋭い線描、大胆なフレーミング、日本の浮世絵や写真に着想を得た平坦な面を有している。その鋭い観察眼に裏打ちされた繊細さによって、凡庸さを脱し、謎めいた力を表現した。ヴァロットンが描く風変わりなイメージは、その率直さと情熱、そして知性によって今日も我々を魅了してやまない。
なお、章立ては、
1章 線の純粋さと理想主義
2章 平坦な空間表現
3章 抑圧と嘘
4章 「黒い染みが生む悲痛な激しさ」
5章 冷たいエロティシズム
6章 マチエールの豊かさ
7章 神話と戦争
なお、会場内の一室にて、世田谷の静嘉堂の東洋磁器コレクション第1回として、「艶めくやきもの ー 清朝の単色釉磁器」をやっている。展示品は多くはないが貴重な作品で、やきもの好きには必見。