ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「悪党に粛清を」

150702 原題:THE SALVATION 93分 デンマーク/英/南ア(今回の南アのように、資金だけの付き合いで、スタッフ・キャストに一切関与しなくても合作に名を連ねることになるのは、どうもスッキリしないと思ったら、セットは南アに組まれ、撮影の大部が南アだったらしい)[脚・監]クリスチャン・レヴリング(デ)

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こんなに痛快な西部劇は久しぶりだ。冒頭から息詰まる展開で、画面構成も見事(夜景のシーン、ヴラマンクの描く空のような不気味な効果を生んでいる)だし、カメラ・ワークが大したもの。しかもだらけるところがなく、93分にまとめている。こんな西部劇をデンマーク人たちが作っちゃうんだから、ハリウッドも真っ青だ。

ただ、目を背けたくなるような残酷なシーン、少なからず。一味の首領が、無実の町民を虫けらのように殺すシーンは、「シンドラーのリスト」に登場するアーモン・ゲート所長(レイフ・ファインズ)を彷彿とさせる。また、屍体の入った棺桶が、御者のいない馬車で運ばれてくるシーンは黒沢明の「用心棒」の場面を思い出させる。この監督、黒沢を尊敬しているらしいから、間違いなくオマージュとしてその場面を描いたと思われる。

時代と舞台は1871年(明治4年)のアメリカ西部(撮影場所は、3月に訪れたばかりのモニュメント・ヴァレーにそっくりなのだが、南アらしい)。入植したデンマーク人兄弟の弟ジョン(マッツ・ミケルセン、上手い!)に、祖国から妻子が到着。無口なジョン、ほとんど喜怒哀楽を表さない。そそくさと妻子を乗せた馬車が、荒野の一軒家に向かうのだが、なんと後から同乗してきた無法者二人によって、自分は突き落とされ、妻子を惨殺されてしまう。

ここからジョンの復讐劇を始まるのだが、状況は圧倒的にジョンに不利で、見ている方も絶望的になるが、意外なところから活路が開ける。

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⬆︎ラストシーンのちょっと前。向こう側に立つのはエヴェ・グリーン扮するマデリン。先住民(ナバホ?)に舌をちょん切られた過去を持つ。以来、声を発しない。セリフなしで、目だけによる演技はちょっとした見もの。彼女、「雨の訪問者」のマルレーヌ・ジョベールの娘だが、母親よりずっときれいだ。

この二人は本来は仇同志。ジョンの妻子を殺したゴロツキがマデリンの亭主で、ジョンに殺されている。だが、複雑な事情があり、最後は仇でなく、文字通り”同士”となり、無法者のはびこる町を一掃して、更に西へと向かう。

#52 画像はALLCINEMA  on lineから