ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「この茫漠たる荒野で」@Netflix

210503 NEWS OF THE WORLD 米 118分 脚本・監督:ポール・グリーングラス(英)原作:ポーレット・ジャイルズ 2016年発表の同名小説。主演:トム・ハンクス

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これはあまりドンパチはないけど西部劇です。イギリス人のポール・グリーングラスと主演のトム・ハンクスの組み合わせは2013年の「キャプテン・フィリップス」以来で、二人はかなり気が合うようです。

そして主役のトム・ハンクスに劣らない強い印象を残した12歳の少女、ドイツ人のヘレナ・ゼンゲルが素晴らしいです。監督がすっかり気に入ったしまったというから、彼女以外には考えられないほどぴったりな役どころと思われます。彼女、トム・ハンクスのことはまったく知らないまま撮影に入り、二人は撮影中にすっかり仲良しになったとか。

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そばかすの残るあどけない表情がとても印象に残るヘレン・ゼンゲル

この原題がまた変わっています。とても西部劇とは思えません。当時、こんな商売があったのかと驚きます。1870年、南北戦争が終わってまだ5年のアメリカですから、もちろん新聞を誰もが読めたわけではありませんから、世界でどんなことが起きているか、知っている人は少なかった頃です。そこで、ちょっとインテリの元南軍大尉であるキャプテン・キッドが主要紙から面白そうな話題、それこそニューズ・オブ・ザ・ワールドを一人10セントいただいて、読み聞かせるという趣向。

物語の出発点はテキサス州最北部、ウィチタ・フォールズ。道中で、ある事件直後の現場に出くわし、そこで英語のまったく通じない少女を見つけます。カイオワ族というインディアンに育てられたため、言葉が通じません。元々はもう少し南部、と言ってもとてつもなく大きなテキサス州ですから、1,000km以上も南ですが、そこのドイツ系入植者の家庭で生まれたのですが、幼い時にインディアンに襲撃され、カイオワ族に連れ去られたことが現場に落ちていた書類で判明します。

さあ、この子をどうすればいいか、すったもんだの挙句、自分でこの子をそこまで連れて行く決意をします。路銀も乏しい中、しかもあらくれ男があちこち出没する中ですよ。言葉の分からない女の子と、すでに老境にさしかかっている元大尉。無事に辿り着けるのでしょうか。

最後はとても心温まるシーンで、ひさびさにホッとした作品でした。