ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ヴィオーラ シチリア島のミステリー」@AmazonPrime

240503 VIOLA COME IL MARE (海のようなヴィオーラ)2022 伊 TVシリーズ シーズン1 全12話 各50m

久しぶりにイタリアものです。テレビシリーズとして母国では相当人気が高かったようですが、IMBdでの評価は6点台でそれほど高くないです。イタリア人とそれ以外の視聴者の受け止め方の相違でしょうか。刑事ものですが、一言で言ってしまえば脚本が大甘で、他の欧州主要国やアメリカの作品に比べてレベルがかなり低い印象です。

それでも、12話も見たのは、舞台がシチリアパレルモで、とにかく舞台が明るいこと、それに合わせるかのように主演のこの二人がかっこいいことが挙げられるでしょうか。フランチェスカ・キッレーミはその名で分かりますがシチリア出身(日本で言えば、和子とか節子というようなやや古くさい名前が多いのが特徴)で、18歳でミス・イタリア2003に選出され、それがきっかけでモデルやコマーシャルに起用され、やがてテレビ、映画への出演機会も増えているようです。演技もまあまあ。本作ではパリから父親探しでパレルモへ。地元の新聞社に務めるジャーナリスト。

いっぽうのジャン・ヤマン(Can Yaman)、妙な名前と思ったら、トルコ人でした。イタリア語は母国語並みですが、高校がイスタンブールにあるイタリア人用の学校だったらしいです。大学は法科に進み弁護士をやっていたのですが、どこかの時点でこの世界へ。ムキムキの肉体に甘いマスク、モテないはず、ありませんね。本シリーズでは、地元警察の警部。

ご覧のように美男、美女が、こんな素敵な大聖堂の見えるマンションでとなりの部屋に住み、バルコニーが共通というなら、そういう関係になりそうなのですが、散々思わせぶりのシーンを作りながら、視聴者を焦らせて、結局そうならないというところはなかなかうまい演出と思いました。テーブルの上に見える極彩色の焼き物はシチリア伝統のマヨルカ焼きで、雰囲気がありますねぇ。

 

そんなバカな!というツッコミどころ満載の、まあ一応ミステリーではありますが・・・。50分が1話で一つの事件を2話ほどで扱います。殺しの場面は多いですが、残忍な場面はゼロ、女性や若年層を意識した内容になっています。

場面転換にドローンによるパレルモ市内や海岸の空撮が使われますが、これがきれいです。それと、ヴィオーラ(すみれのことです)と称する主人公の着る衣装がひんぱんに変わり、ファッションショーのごときで、女性はもとより男性でも楽しめます。

ヴィオーラは他人の感情を色彩にして読み取るという特殊な技を持っていて、それが随所にあらわれ、時に犯人特定にも役立てたりもしますが、これはかなり子供っぽい演出でしかありません。

それでも一度ヴェニス国際映画祭でテレビシリーズとして受賞していますから、そこそこの評価は得てはいるようです。

ちなみに監督のフランチェスコ・ヴィカーリオですが、どこかで聞いた名前と思って検索したらやはり父親はマルコ・ヴィカーリオ(1925-2020)といい、1965年の「黄金の7人」(7 Uomini d'Oro)を撮っていました。この作品で主役を演じたのは監督の夫人で当時最も美しい映画スターの一人ともてはやされたロッサナ・ポデスタ(Rossana Podestà)。どうでもいい情報でした。

ところで、本作制作にあたって、シチリア島観光局が相当な力瘤が入ったのは間違いないでしょう。全編、シチリアの雰囲気満載ですから。ちなみに、警察署でフランチェスコ警部のデスクの上には三色旗(トリコローレ)の他に、シチリア島の旗が置かれていました。↓これです。トリナクリアと呼ばれ、3本の足はシチリア等のとんがった三つの岬を表しています。