ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「キアラ」@イタリア映画祭(配信)

230804 CHIARA  2022  1h46m 脚本・監督:スザンナ・ニッキャレッリ('75 ローマ)

地味な作品で、多分、日本ではあまり受けないかも。そもそも聖キアーラと言われて、即座に思い当たる人はそれほど多くはないでしょう。

愚亭は大昔、1年ほど滞在していたペルージャからほど近くにアッシージがあったので、大学からのツアーほか、個人的にも何度か訪れたことがあり、彼女が初期に活動の拠点としていたサン・ダミアーノ教会にも行ったことがあります。しかし、当時、この聖女については、名前以外なんの知識もありませんでした。

ということで、本作を見ることにしました。ほとんどなんの説明もなく、いきなりキアーラ(英語ではクララ、またクレア)が、父親から裕福な男性との結婚話を持ち込まれたのを機に、妹アニェーゼと共に、フランチェスコのところに帰依したいと訴えます。

当時、フランチェスコ会は女性の入会を禁じていたこともあり、彼女は独自に女性たちだけの修道会を組織して清貧を旨とする社会活動と修道活動に入ります。

当時、聖書はラテン語で書かれていて、素養のあったキアラは仲間に読み聞かせます。するとフランチェスコから、ラテン語ではわからない人も多いから、普段の話し言葉で読み聞かせなさいと。

すると聖書を俗語にすることはいけないことと反論しますが、結局、彼に従う場面はなかなか興味深かったです。当時はイタリア語というのはなかったので、いわゆる土地の俗語ということです。

フランチェスコとの関係はもう少し詳しく描いて欲しかったのですが・・・。ちょっとその点が残念です。当時の法王、グレゴリオ9世も、わざわざ噂を聞いて彼女の元を訪ね、修道会の会則ほか、彼女の業績を認めてくれます。彼の尽力もあり、死後5年で列聖されます。

画面が美しい!色調と陰影を意識した画面作りが成功しています。時折グレゴリオ聖歌が聞こえたり、終盤はミュージカル風なポップな歌が使われたり、「あれ?」ってな感じにもなりますが、さほどの違和感を感じませんでした。

撮影はすべて現地で行われたようです。コスチュームも限られたデザイン、いわゆるチュニックだけ。唯一、ルイージ・ロカショ扮する方法のみカラフルな衣装でした。

ヴェニス国際映画祭で最優秀イタリア映画賞ほか全5部門で受賞、さらにドナテッロ賞の作曲賞、衣装デザイン賞にノミネートされています。俳優では、上記ロカショ以外、愚亭の知らない人ばかりでした。