ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

ロッシーニ「スターバト・マーテル」@東京文化会館

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このコンサートのことを気づくのが大幅に遅れたため、初めて5階で聞くことに。

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初めての体験で、すこしワクワク感も。最前列で、しかも特製の腰高の椅子に座ると、角度が急で、怖いほど。上手1/4ほどが隠れるが、独唱者、合唱団全員も見られたし、オペラグラスを持参したので格段の不都合もなし。音響的にもまったく問題なし。負け惜しみでなく、今後、やたら高い公演の場合はこれも大ありと思った次第。ちなみに、5階のやや右寄りのこのD席、@¥4,600。これより安いE席 (@¥3,600)はさらに視界がせばまる席、つまり極端に左右どちらかの端の席なのだろう。

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3/26の東京文化会館小ホールでの「ロッシーニとその時代」の記事の中でも一部触れたことだが、42歳で音楽界から引退して(随分早い!)故郷のボローニャで過ごすが、その少し前に、マドリッド在住の親しい司祭に頼まれて、初演非公開しかも一度だけ、楽譜の公開もなしという条件で作曲したのがこの曲。途中、体調不良もあり、ジョヴァンニ・タドリーニに作曲を任せて完成。

ところがである、門外不出の楽譜が出回ったため、ならば全部自分で作曲しなおすとして完成させたのが今演奏されている「第2稿」と言われるもので、まあ、曰く因縁のある曲なのだ。

今回は現在国際的にも大変評価の高い4人のソリスト陣に加え、一人一人がオペラ歌手という、その名も東京オペラシンガーズ約80人が揃う舞台だけに、必見、必聴!期待にたがわず素晴らしい演奏で、ブラーヴィが飛び交い喝采、いつまでも止まずという、ひさしぶりの光景だった。

ソリスト陣では、エヴァ・メイマリアンナ・ピッツォラートは過去数度聞いていて、その力量は分かっているつもりだったが、改めて聴くと、やはり只者ではない感が強い。エヴァ・メイは少しばかり声も容貌も衰えたかなと思えたが、聴かせどころはしっかり存在感を見せつけた。

初めて聴くマルコ・チャポーニ、輝かしい高音はわれわれを痺れさせるのに十分。それにもまして凄かったのがバスのイルダール・アブドラザコフだ。名声はつとに名高いことは以前から承知していたが、まさに噂通りの凄みのあるバス。しかも高音も結構出せるから。ロシア内陸部奥深く、ほとんどカザフスタンの国境に近い地方都市出身。

ソリスト陣にも負けるとも劣らない聴かせどころは合唱である。知っている顔が10人はいた、すごい合唱団!これにはソリスト陣からも盛んに喝采とブラーヴィが送られていた。

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さて、スペランツァ・スカップッチ、ピアニストから指揮者に転じた(あるいはまだピアニストとして活躍か)若手女流指揮者で、一言で言えば、日本の女流指揮者に比べると、脚を大きく広げ、腰を下ろすなど、そのダイナミック極まる指揮ぶりが目立つ。音楽的感性にどの程度優れているかは定かではないが、まあまあやはり完成度が高い演奏だったことは間違いない。

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イタリア女性としては、まあ普通でとくべつ別嬪さんではないが好感度、高いようだ。この日は太い編み込みを下げて登場。

蛇足ながら、このホール、演奏後の撮影にはすこぶるうるさいところで、終演部が近づくと”ゲシュタポ”があちこちに現れて、暗闇に目を光らせる。時折”犠牲者”が出るが、上からそれがよく分かって、上からでないと見られない光景を楽しんだ。

#24 文中敬称略