ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

心震えたヴェルレク@ミューザ川崎

190113 滅多に聞けない名演奏!ヴェルレクを生で聴けて、大満足!

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こんな名演奏会が近くのホールで開催されたのに、気づくのが遅れて、やっと買えたチケットはなんと4階席。初めてこんな高い席に陣取った。でも最前列の中央寄りで、聴覚的には問題なし。視覚的にもオペラグラス持参だったので、合唱団員(160名ほど?)の顔も一人一人確認できた。知っている顔はわずかに1名。

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4階から見ると釣り天井がこのように見える。例の東日本大震災時に崩落した華奢でオシャレな吊り天井に変わって、いささかパッとしない天井になったが、これも、しっかり吊っていることがよく分かった。

マチュア合唱団とは言え、オーディションで選ばれた精鋭たちで、驚くなかれ、これだけ長く難解な曲を暗譜で歌ったのだ。全体はほぼ100分で、合唱団が歌っている時間はおおむね75分ほどか。いずれにしても、相当な長丁場である。(これに比べると、第九の合唱部分は約12分、「復活」に至っては8分弱だから、いかにヴェルレクが大変かが分かる)

合唱のことから書き始めたが、たまたま現在、自分もヴェルレクの練習中であるため、どうしても興味は合唱へと向かったのだが、オケも独唱者たちもプロ中のプロであり、驚嘆すべき演奏だった。ソリストの4人のうち、ベースは当初予定のアン・リーが体調不良でジョン・ハオに変更になったが、まったく問題のならない変更。

4人とも素晴らしい歌唱を聴かせてくれたが、中でもソプラノの森谷真理の、何とも表現できない高音の輝きには忘我の境、もちろん清水華澄も勝るとも劣らない技の限りを尽くしてくれ、名手福井 敬オペラなどより、こうした宗教曲の方が上手いと思わせる熱演だった。急遽登場のジョン・ハオ、伸びやかな低音がすーっと耳に入る。

面白かったのは、ソプラノとベースは譜面台に楽譜を置いて、アルトとテノールは手持ちで歌っていたことで、目ている側からだと、譜面台に置いて歌う姿の方が心地よく感じるのは何故だろう。

ロレンツォ・ヴィオッティ、まだ30前というから驚く。現在日本で大活躍中のアンドレア・バッティストーニより更に若いのだ!ローザンヌ生まれのイタリア系スイス人で、親父のマルチェッロも聞こえた指揮者だった。ヴィオッティと聞くと、自分でも演奏したことがある18世紀のヴィオリニスト兼作曲家、ジョヴァンニ・ヴィオッティを思ってしまうが、どうやら関係ないようだ。

冒頭、Requiemの歌い出し、究極のピアニッシモの響きには驚く。ヴィオッティの厳しい要求に応えて、あそこまで絞り込んだ演奏を極めた東響と合唱も見事だ。そして怒りの日の例の激しい導入部の総毛立つような物凄さ、なんでも前日のサントリーホールでの演奏ではバス・ドラムが演奏中に穴が開くというハプニングがあったらしい。

100分、ぶっ通しで演奏者は一様に厳しい時間だったろう。聴く方もそれに応えるかのようにしわぶきひとつ発することなく、あの大空間が徹頭徹尾静寂の中で、この歴史的と呼ぶにはいささか大げさかも知れぬが、名演奏に酔いしれていた。終演して、熱狂的大拍手とブラヴォーが館内をゆるがすまで10秒以上もあったろうか。演奏者も聴衆も、終演を惜しむかのように長い間合いが印象的だった。

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ロレンツォ・ヴィオッティもかなり感動していたことが表情、仕草から伺えた。

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4階席からだと、やはりこの程度の画質になっちゃうなぁ。互いをねぎらうソリスト陣。

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オケメンバー、ソリストたちも合唱団に盛んに拍手を贈っていたのが印象的!

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挨拶で出てきたバンダ。舞台袖で演奏していたらしく、客席のどこにもその姿は確認できなかった。

#3 文中敬称略