ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

ヴェルディのレクイエムをコバケン指揮で聞く@サントリーホール

180307

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なにやらおどろおどろしい色彩とデザインのチラシだが、当日配布プログラムの解説によれば、主催した武蔵野合唱団が、自分たちの目指すレクイエムを表そうとしたらしい。真っ赤に燃え盛る紅蓮の炎と、静謐さの中により高い熱を秘めた青い炎なんだそうだ。

名門合唱団の一つ、武蔵野合唱団は今回が節目の50回目の定期演奏会ということで、それに相応しい演目をどうするか、ヴェルレクに決まるまで、相当な紆余曲折があったらしい。

というのも、5年前の定演で取り上げたばかりということもあり、コバケンからも、予想外の新演目の提案もあったとか。悩んだ挙句、やはり今だからこそできるヴェルレクをという団員の熱い思いがマエストロにも通じて、やっと決まったというから、やはり老舗合唱団は悩みどころが違う。

今日の席は、左セクションのかなり前寄りで、こうした大合唱団付きの大曲を聴くには相応しい位置とは云えない。またマエストロ両脇のソリスト4人も、左側の女声ソリストはよく聞こえるが、こちらから見てマエストロより遠くにいる男声陣の聞こえ方が弱く、バランスがよくないのは残念であった。

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ちなみにソリストだが、よくぞこれだけのメンツを揃えられたと思って、彼らの登場を見ていたら、「アレレ?」。 なんと最初に入場してきたのは、私服(上は赤い裏地付きの黒っぽいジャケット、下は色落ちしたような黒っぽくぴっちりした綿パン)の青山 貴!マエストロが冒頭マイクで事情説明したが、当初出演予定の妻屋秀和が風邪で声が満足に出ないため、急遽、青山 貴を呼び出したとかで、着替える間もなかったんだろう。

妻屋秀和が聞けないのは残念だが、代役の青山 貴もまったく引けを取らないバリトンだけに、この”事故”に不満を漏らす人は少ないだろう。案の定、終演後のソリストではいきなりでも名唱を披露した青山 貴に一番大きな喝采とブラーヴァが飛んでいた。やはりファンはよく知っている。

森 麻季は必ずしも好きなソプラノではないが、うまさはやはり抜群!最後のリベラ・メでの長いソロ部分をたっぷりと聴かせてくれた。メゾの山下牧子も、ホールの奥までよく届く絶品の発声で存在感たっぷり。聴かせどころ極めて多し。

ただねぇ、森 麻季のコスチュームだが、黒地ベルベットに豪華な金の刺繍をほどこし、しかも裾のすこぶる長いもので、死者のための鎮魂曲だけに、いかがなものかと思わざるを得ない。ちなみに、メゾの山下は黒のごく普通の舞台衣装で、対比くっきり!

合唱団、正味2時間近い大曲を暗譜で堂々と歌い上げたが、どれだけの練習量だったんだろうか。大したものだし、正直羨ましいと思った。この曲はやはりこれくらい人数が揃わないと挑戦できないからね。

今日は「怒りの日」シークェンス終了後、20分の休憩を入れたが、これはいい判断だろうと思う。前半、右隣のオトーサン、時に軽くいびきをかくほど気持ちよく居眠り、左隣のオカーサン、風邪なのか、時折咳き込みが止まらなくて気の毒だった。

後半は俄然ソロ部分が増え、いっそう堪能できた。とりわけ後半の1曲目、オッフェルトーリオの素晴らしさには参った!

大喝采のうち、終演となり、マエストロがソリストを一人ずつハグし、さらに合唱団にお辞儀をさせるという、まあ一般的には珍しい光景に遭遇。その後も、オケのパート毎にに立たせるセレモニーが延々と。

三大レクイエムと一般に言われるモツレクフォーレク、そしてこのヴェルレク。残念ながら、ヴェルレクだけはまだ合唱で歌う機会に恵まれないが、声がでているうちに一度は挑戦したいものだ。

 

#15 文中敬称略