ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

オペラコミック「チュリパタン島」@大田区民プラザ(下丸子)

220818 今日は大変珍しいオペレッタを観ました。

我が合唱団の指導者のお一人、星野恵里先生(メゾソプラノ)が出演されるので、団員を誘って出かけました。

主催は大江戸音楽団というプロのオーケストラです。今日は30名弱の編成でしたが、いい音色を奏でていました。

まずは「地獄のオルフェ」序曲を軽快に奏で、ついで「ジャクリーヌの涙」というチェロの名曲、これを首席チェリストの女性が実にしっとりとお弾きいただき、じんときましたね。オッフェンバック自身、チェリストということもあり、こんな素敵な逸品を遺していたんですねぇ。

そして、これまた知らない人はいないと思われる「ホフマン物語」から例の舟唄があって、いよいよ始まり、始まり〜〜!チュリパタン島という架空の国が舞台の1幕ものです。前奏の間に、下手から突如鉄砲が飛び出したり、王様以外の出演者がなにやら慌ただしく出たり引っ込んだり、いきなりドタバタぶりをうかがわせます。

男女が途中で入れ替わるという、いわば奇想天外な展開で笑わせるという趣向でして、わかっていても、結構笑えちゃうんですが、ま、このあたりは出演者の演技に負うところが大きいですね。「そんなアホな!」ってツッコミ、入れたくなりますが、押さえて抑えて!

オッフェンバックらしいメロディー、結構、あちこちに散りばめられていて、素敵な二重唱など特に耳に残りましたね。カーテンコールがあって、ここで「天国と地獄」の例の超有名な序曲の第三部があって、聴衆と舞台が一緒に手拍子となります。これは楽しかったですねぇ〜〜。

カーテンコールでは、出演者、ナレーター、オケ全員が揃ったところでパチリ!左から王様の家臣、ロンボイダール役のテノール三村卓也さん(超高音、楽に出てましたね)、ついでその妻役の星野恵里さん、王様の杉野正隆さん、マエストロ、ナレーションの原さん、王子アレクシーの渡邉恵津子さん、右端は家臣の娘(?)下村将太さんです。

それにしても、平日の昼下がりで、しかもコロナ禍が盛り返している事情もあってか、ガラガラなんですよお。もったいないですよ、こんな洒落た舞台なのに!終演後、星野先生にお出ましいただき一緒に写真、撮らせていただきました。

 

「大いなる沈黙へ」@Amazon Prime Video

220817 DIE GROSSE STILLE (大いなる沈黙)2時間49分、独仏瑞合作、2005年製作、日本公開は2014年。監督・脚本・撮影・編集:フィリップ・グレーニン

実に大変な作品です。3時間近いのですが、ただただ静謐な画面が続きます。このグランド・シャルトルーズ修道院はフレンチアルプス山中にある最も厳格な戒律で知る人ぞ知る修行の場。

撮影機会を窺っていたグレーニング、辛抱強くその時を待ちます。最初の撮影申請は1984年。その時は一言「まだ早い!」、以来待つこと16年!ある日、「今なら、いいよ!」って。さっそく機材を持って乗り込んだグレーニング、いろいろ条件をつけられます。まずナレーション、BGMなど一切なし、撮影に必要な照明もダメ!撮影中は音を立てるな・・・。

修道院に入り込み、黙々と彼らと行動を共にして撮り溜め、みずから編集を行い、やっと完成したという稀有な作品です。

雲の動き、鳥の囀り、木々をわたる風の音、鐘の音、祈りの言葉、聖歌の響き、耳に届くのはそれだけで淡々、粛々と描かれます。なにかやはり神々しい雰囲気が画面いっぱいに溢れます。信心がなくても、その世界に吸い込まれるような感じになります。

「愛と銃弾」@Amazon Prime Video

220816  AMMORE E MALAVITA (愛とやばい人生、ナポリ方言なので、AMORE→AMMORE)イタリア 2017  2時間13分 共同監督:アントニオ/マルコ・マネッティ(兄弟)

情報なしで、偶然に見たところ、実に痛快でした。マフィア(舞台はシチリアでなく、ナポリなんで、カモッラという組織です)の血みどろの抗争を扱っているのに、喜劇で、しかもミュージカル仕立て、なんともハチャメチャで楽しめる作品になっています。しかも日本で言えば津軽弁のような強烈なナポリ方言であることも映画に独特のリズムを与えています。秀作です。

主演の1人、チーロを演じるジャン=パオロ・モレッリもいいけど、やはり⬇︎のクラウディア・ジェリーニさんが冴えています。今のイタリア女優の中では、好きな女優の1人です。

果てしない抗争に疲れた”魚介王”ドン・ヴィンチェンツォ(カルロ・ブッチロッソ)は妻のドンナ・マリーア(クラウディア・ジェリーニ)にそそのかされて、死んだことに。

ところがこの「狂言」を偶然目撃した看護婦がいて、部下に直ちに看護婦を消すように仕向けます。手下の1人チーロが彼女を発見するものの、なんと昔馴染みの恋人!

2人の逃避行が・・・。風光明媚なナポリ湾、背景にはヴェスヴィアス火山と、およそ殺しにはそぐわないのんびりしたたたずまい、どこで歌になるか、ワクワクしながら最後まで見てしまいました。歌がまたどれもいいんですね、これが。いいめっけもんでした。

「血の果てを行く」@Amazon Prime Video

220815  LA BANDERA(スペイン語で軍旗)1935年、フランス映画、96分、監督:じジュリアン・デュヴィヴィエ

31歳のジャン・ギャバン、さすがに初々しいです。パリで殺人事件を起こして、なぜかバルセロナに逃げています。そこで、早々に財布を擦られて一文なし。仕方なく街のポスターを見て、外人部隊に入隊。アフリカ戦線に送られます。駐屯していたモロッコで土地の娘(アナベラ、この時、28歳)と一緒に。

実はかれをつけねらっていたフランス人がいたのですが、そこに気づくのは・・・。ま、単純な話ですが、なんたって1935年(昭和10年)ですからねぇ〜。もうそれだけで価値のある作品、しかも名匠デュヴィエヴィエですから、余計なツッコミはなしでこの古臭い名画を楽しみました。

それにしても、スペインで募集した外人部隊なのに、なぜか部隊内では全員フランス語というのも、考えてみればヘンな話ですが、ま、野暮なことは、この際,考えない方がよさそうです。

いざ、本番!

220812   これの、本番でした!

ティアラ江東では、到着後ただちに抗原検査を済ませ、幸い全員が陰性と判明したことで、マスクなしで歌うことを主催者が決めてくれました。ヤッタァ〜!って感じですかね。

合唱団の並びは上背で決められたので、なんと今回は最前列の左端、つまり上手側ということで目の前は金管の低音部、第九では出番のないチューバが私の目の前(空席)、その隣はトロンボーンの低音部を受け持つ奏者です。男声が例の「ザ〜〜イトゥン シュルンゲンと歌うところでまず最初の音を奏でる方です。

滞りなくゲネプロも終了し、開場時間になり、スタンバイの長〜い合唱団員は2階席の最奥部で聞いても構わないと事前にお許しがあったので、いそいそと所定の位置へ。

1階の前方にはお客さまを入れませんので、こんな見え方です。あとで舞台上から見たら、おおむね6割ぐらいの入りでしたね。コロナ猖獗時にしては、よく入ったなあという感想です。

大槻さんの「誰も寝てはならぬ」を聞き終わったところで、地下の合唱団控室へと戻りました。本当は、青山 貴さんの「イヤーゴの信条」を聴きたかったのですが・・・。ま、合唱団員の分際で大槻さんまで聞けたことにここは満足すべきでしょうか。

んで、いよいよ本番。合唱団員入場し、第九の4楽章の開演です。オケは第九を演奏するには小編成で臨んでいます。コンバス、チェロ共、2本ですから。それでも立派な演奏ぶりです。青山 貴さんがやおら立ち上がって第一声!いやぁ〜気持ちいいですねぇ、この歌いっぷり!そうこうするうちに我々も第一声。いいぞ、いいぞ!

私の右側は某有名合唱団の団内ソリストのようですし、真後ろは練習初回時に発声を指導してくれた先生!本番ではこう来るか!と思えるほどの熱量で、右の先生は小柄な身体を全身震えるように歌うし、後ろからはバンバン飛沫が飛んで、腕や手に風圧を浴びながら、こっちも負けじと普段出ないほどの音が楽々と出てくるという、ちょっと不思議な体験でしたね。火事場の馬鹿力的な。

アンコールは「フニクリ・フニクラ」、団内ソリストでもあるテノールとソプラノが主旋律のソロを歌い、合唱がそれに和する形で、あっという間に終了。最後に「そりすべり」を楽しくオケが演奏して終演!

終演後、合唱団控室で、マエストロ、ソリストの方々がご挨拶と感想を述べられ、集合写真撮影があってちょうど9時半解散でした。

外に出ると雨が降ったらしく路面が濡れて光っていました。そそくさと住吉の駅へ。自分にとって今年のメインイベントが終了してしまい、一抹の寂しさをまとっての帰還でした。