ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ボローニャの夕暮れ」

100708 銀座シネパトス 原題:PAPA' DI GIOVANNA 伊 104分 原作・脚本・監督:プピ・アヴァーティ 出演: シルヴィオ・オルランド、フランチェスカ・ネーリf:id:niba-036:20100708215326j:image

成人している一人娘を、まるで幼子のように可愛がる父親。それは時として、子離れが出来ない、情けない父親の姿として映る。

一方、自分より美しい母親に対しては、知らず知らずライバル視している自分の気持ちをもてあますジョヴァンナ。鬱々として楽しめない姿に、周囲も自然に敬遠しがちだ。それでも、人並みにボーイフレンドの一人も持たせてやりたいと、父親なりにある細工をするのだが、これが予想だにしない結果を娘にもたらし、ついには家族がバラバラに壊れて行く。

第二次大戦前夜のボローニャ、ごく普通の家族が、傷つきやすい年頃の娘が引き起こす悲惨な事件をきっかけに、ゆっくりと崩壊していく様子を、セピア調の、彩度を抑えた画像で描き出す。バラバラになった家族3人はラストに再び一緒になるのだが、嘗ての幸せは戻ったのか。

日本人によく知られたビッグネームは出演陣にはない。その方が市井のひとびとを印象深く描くのには適しているように思われる。それにしても、娘をやる女優は、日本人が思い描くいわゆるイタリア娘とは程遠い、うすっぺらな体つきの不美人。母親役の女優も、娘が引け目を感じるほどの美形とは思えない。ま、そのことが却って、作品に厚みを加えているのだが。あとで聞いた話だが、娘役のアルバ・ロルヴァケールはこの作品で、イタリア国内の映画賞を総なめにしたとか。

脚本がなかなか緻密に出来ていて、無駄なカットはほとんど見当たらず、展開が早く、画面の切り替えに思い切りの良さを感じる。冒頭とラストの画像はモノクロームを使い、また当時の歌や音楽をモノーラルでBGMに使うなど、大戦直前の1938年(昭和13年)の雰囲気が出るよう、さまざま工夫の跡が見られる。久しぶりに見たイタリア映画。佳作。蛇足ながら、「ジョヴァンナのパパ」という原題を見事に日本人好みに変えている。

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