ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「愛のために戦地へ」@イタリア映画祭

210714 IN GUERRA PER AMORE 2016 99分 脚本・監督・主演:ピエロ=フランチェスコ・ディリベルト 通称 Pif(Piero=Francesco Diliberto)

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これもまた第2次大戦終戦秘話の一つでしょうか。大戦末期、イタリアはムッソリーニ率いるファッシスト、全土を席巻していたナチス・ドイツ、そして新たに上陸してきたアメリカ軍の三つ巴の戦いとなり、毎度のことながら、無辜の住民に多大な犠牲を生むという図式です。

本作は、ニューヨーク在住のアルトゥーロ(Pif)と恋人フローラのちょっと心なごむ、可愛らしい恋物語を、米軍のシチリア上陸作戦に絡ませて描いていきます。しんみりとするラストが素敵です。

シチリア生まれのPifことディリベルト監督(48)は、バラエティー番組出身のお笑い芸人で、以前から大戦末期のイタリアについてなみなみならぬ関心を抱いており、そうした時代性を踏まえた作品を作ろうとしていたとか。「マフィアは夏にしか殺らない」(2013)を手始めに、すでに何本か撮っています。なかなかの才人のようです。(余談ですが、風貌や芸歴を見ると、なにやらピコ太郎こと古坂大魔王を彷彿させます)

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アグリジェント近くの神殿の谷での撮影中のディリベルト監督

舞台はニューヨークが1割、シチリアが9割という感じです。レストラン経営のマフィアの後継息子カルメーロは、美人の誉高いフローラと結婚したくて仕方ないのですが、フローラには恋人が。相手はそのレストランで働くアルトゥーロ。これでは、まったく勝ち目はありません。

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まだ普通のフィルムカメラしかない時代に、自撮りをやってるアルトゥーロとフローラ

勝ち目がないと悟ったアルトゥーロ、一計を案じ、フローラの父親に直談判しようとシチリア上陸作戦を行うことになっている米軍の徴兵に応じて、自分の生まれ故郷でもあるシチリアに向かいます。

一方、カルメーロ側もある作戦をねります。それはマフィア・ルートで、アルトゥーロをシチリアで戦死と見せかけ殺害することです。しかし、殺害されたのは、一時的に身分を入れ替わった上官でした。

米軍は米軍でやはりシチリアに跋扈するマフィアを味方につけようと、収監中のマフィアの大物ラッキー・ルチャーノに話をつけさせます。これは実際にあった話です。映画の最後は、自由の身になったルチャーノが実写フィルムで映し出されます。

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空襲警報が鳴り、避難する村民の中には、熱狂的ムッソリーニ支持者のかつぐムッソリーニ等身大人形と、信仰心の篤い老婆が担ぎ出すマリア像が衝突を繰り返します。

戦場を舞台にしていますが、これは人情モノの喜劇ということでしょう。結構笑えます。

上の髭のオヤジですが、戦場に駆り出された息子が帰還しないので、ムッソリーニに愛想をつかし、2階から投げ落とします。それが途中でひっかかり逆さ吊り状態になります。

これは、まさに1945年4月、ムッソリーニが北伊湖沼地帯でパルチザンに捕まり、ミラノ中心のロレート広場のガソリンステーションでみせしめに、愛人ペタッチと逆さ吊りにされたことを暗示しているようです。

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主役アルトゥーロ役を演じたディリベルト監督。ピコ太郎よりはいい男かな。

女優陣、日本ではまず無名でしょうけど、二人ともなかなかの美貌です。

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フローラ役のミリアム・レオーネ(36)

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村の娘役はステッラ・エジット(34) 二人ともシチリア出身です。

ハスキー作戦と称する作戦で、米軍第7部隊が上陸したのはシチリア島南西部のジェーラですが、トップの写真にある特徴ある海岸はどうやらアグリジェントの海岸線のようです。また、アグリジェント郊外にある神殿の谷のコンコルディア神殿も出てくるので、この推理で間違いないと思います。