ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

バーデン市立劇場の「ラ・ボエーム」

f:id:grappatei:20101010072004j:image:left雨の中、ミューザ川崎へ。今日の席は7列目中央。ただし、4列目までをつぶしてオケスペースにしているので、実質3列目で、指揮者は手の届くようなところに。

バーデンはウィーンから南南西へ25kmのところで、丁度ウィーン森の東端にある、その名の通りの温泉保養地。そこの小さな市営劇場というわけだが、1716年創立というから半端な歴史ではない。ヨーロッパ中から王侯貴族や芸術家が集まり、保養地として栄えたとか。その中には、モーツァルトベートーヴェン、シュトラウス、レハールなどの著名な音楽家が含まれる。

いかなる経緯からか、毎年、9-10月に日本公演、それも引越公演を実施してきている。日本縦断公演で20都市ほどを2月間で巡業している様子。既に日本公演回数は実に225を数えるというから凄い。東京周辺では毎年この時期に、ミューザ川崎が会場となる。愚亭は今回で確か3度目だ。

引越公演とは言え、田舎の歌劇団だから、小所帯。ソリスト13名、合唱15名、オケ30名、裏方10名、計70名弱という勘定だ。それでも、舞台セットも持ち込んでくるから、移動はそれなりに大変だろう。

ソリストもロシア、ウクライナエストニア、、スロヴァキア、ブルガリア、オーストリアと、主に東欧系中心の布陣。傑出した歌い手はいないまでも、皆、なかなか上手く芸達者。特に主役の一人、ミミをやったスロヴァキア出身のエヴァ・ホルニャコーヴァさん、歌もうまいし、美形でスタイルもなかなか。ロドルフォ役のお兄さんは少し線が細すぎ。寧ろマルチェロのガラボフが優れたバリトン歌手とお見受け。ムゼッタのペトラ・ハルパー-ケーニッヒさん、地元ウィーン出身で、コケットなムゼッタ造りに成功していた。

合唱団が15名と小さいので、第2幕のカフェ・モミュスの場面は賑やかな雰囲気造りに、相当苦労していたようだ。でも、決して寂しい印象はなく、演出の巧みさに救われていた。

コンパクトな舞台装置がまたよく出来ていて、1幕2幕は同じだが、3,4幕がそれぞれパリ左岸カルチエ・ラタンの街頭、14区ダンフェール・ロシュローの門だから、3回の舞台転換があるのだが、各回とも要した時間は5分程度と手際のよいこと。

サントリー・ホールでも時折こうしたホール・オペラが行われているようだが、こうした普通のコンサートホールでのオペラ上演というのは、大掛かりな本格上演とはまた別種の興趣があり、悪くないと思う。これからもどんどんやって欲しい。

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