ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「推理作家ポー 最期の5日間」

121012  109CINEMAS川崎 THE RAVEN (大鴉)2012米(撮影はほとんどがハンガリーセルビア)[監]ジェームス・マクティーグ

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エドガー・アラン・ポーのファンなら、倍も楽しめる作品か。残念ながら、遠い昔に何作か読んだに過ぎない者には、普通の楽しみ方。それでも、まずは痛快な110分だった。

ポー自身、40歳で謎の死を遂げ、最期の言葉が「レイノルズ!」であった事実を、巧みに取り入れたフィクション。

彼の推理小説にぞっこん、というより熱狂的読者が仕組んだ、巧妙極まる殺人予告事件を、ごくまじめなフィールズ警視正と組んで、解決せんと奔走するポーを中心に、サスペンスフルに描いた作品。最後まで飽きさせない脚本は一応成功している。

二人とも俳優だった両親を持つポーの前半生は、貧困と不運の連続で、惨めなものだったようだ。作品が売れだして、やっと幸運をつかむものの、婚約者にも恵まれず(離婚、死別、裏切り)、結局不遇のうちに謎めいた死に方、と散々な一生だったようだ。

残されている彼の肖像画を見ると、そうした様子が垣間見える、かなりしけた表情だが、彼を演じるのは爽やかな目元に特徴のあるジョン・キューザック。余り存在感の感じられない俳優だが、この作品では、生き生き見える。

映画は、犯人が誰であるか、巧妙に見る者の予想を裏切るように展開していく(尤も勘の優れた人や、ポー愛好家なら見抜けるかも)。自分が愛する婚約者がさらわれ、生死も分からない状況下、半狂乱になりながら、持てる洞察力を総動員して必死で探しまわると、意外なところに・・・。

原題が大鴉とあるように、これがテーマになっている。冒頭、大鴉目線で俯瞰するカメラ・アングル、またラストシーンも同様。そしてエンド・ロールが、大鴉をイメージする斬新な映像作りで、思わずニンマリ。

ところで、この邦題は余り感心しない。確かに「大鴉」とか「ザ・レイブン」では、日本のファンには馴染まないだろうけど、もう少し何とかならなかったのか。

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