ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「アントオニ・ロペス展」

130507 渋谷Bunkamura ザ・ミュージアム

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これまで全く知らない画家であったが、ポスターの絵柄見ただけで行きたくなった。1936年、ラ・マンチャのちっちゃな村出身で、現在77歳で活躍中。➡詳細

⬆の絵はマドリッドのど真ん中、グラン・ヴィア(旧名ホセ・アントニオ大通り)を定点観測ではないが、連日、早朝に来て、少しずつ描き足していったというから、その粘着性に脱帽だ。

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⬆ポスターに使われた作品。これは娘マリアを鉛筆で描いた肖像画だが、内面まで透視するような描き方が凄い!

今回の出品作品は全部で64点と、いささか少ない印象を与えるが、極めて充実した内容であり、たっぷり1時間半かけて鑑賞した力作ぞろい。素描、油彩、木彫、浮き彫り、コラージュ、etc.,と多彩な表現手法を試みていて、どの分野も実に興味が尽きない。

アントニオ・ロペスといえば、日本では田中一郎ぐらい、その辺にざらにある名前で、しかも署名はこの後にガルシア(母方の名前かな)も入れているが、これまた高橋か鈴木かという名前。また署名の字体が、カチッとした書体で、何と無しに彼の性格を表しているような気がした。

マドリード」というコーナーには、市内の俯瞰図を超大型のキャンバス(尤も継ぎ足しだが)に描いた作品が5, 6点並んでいるが、制作時間が、ほとんど6、7年以上もかけている。町の風景が、その間少しずつ変化しているのも、描き込んでいるというから、単なる風景画ではないところに、彼の真骨頂が伺われる。

1960-1970頃に制作した「室内」というコーナーの作品も、日常空間をそのまんま切り取って描写しており、例えば浴室やトイレという、余り他人に見せたくない空間をも、汚れやゴミなどもそのまま細々描き込んでいる点にも彼らしさを感じざるを得ない。

一方、花や果物を描くと、優しさや繊細さを感じるし、振幅の大きさが結構痛快な画家である。