ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「バーニー・フュークス展 - アメリカの感性と魂 -」

141002 展覧会のホームページ解説から概要をピックアップすると、

★20世紀アメリカが生んだ偉大な画家で、アメリカ黄金時代50's、60'sを描いた。ケネディ大統領から、スポーツ、子どもの絵本まで20世紀後半のアメリカを描いた原画80点を展示。光が歌い、影達が語りかけてくるバーニー・フュークスの世界。

とまあ、こういうことになる。

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どこかノーマン・ロックウェルを思わせる作風も感じられるが、実に多彩で、観る者を画面に釘付けにする独特の世界観を感じる。若いときの事故で、右手の指3本を失い、念願だったトランペッターの道を諦めて、絵描きになったそうだが、人間、何が幸いするか分からない。もし事故がなければ、凡庸なトランペッターで一生を終えたかも知れないのだ。

上は言わずと知れたJ.F.ケネディーの肖像画だが、ハリウッド・スター以上のスターらしさを感じた画家だが、敢えてそういう華やかさを抑えて制作したらしい。何事か事態を憂慮するような遠い目をした大統領の姿が見事に描かれている。右下、数字の37に見えてしまうサインはBernie Fuchsの頭文字を少し変形させたもの。Fucksというから、ドイツ系なのだろう。フックス(独)でなくフュークスと発音。

最近放映されたNHK日曜美術館で知って、小雨をついて代官山の小さな画廊へ見に行ったのだが、期待以上の素晴らしさに圧倒されっぱなしだった。

当初は車の広告画を描き、やがて「マッコールズ」などのファッション誌、ついでスポーツ・イラストレイテッド誌、それも自分が愛した野球やゴルフ関連の絵を多数。さらにフランク・シナトラタイガー・ウッズ、政治家、王族等、有名人の肖像画で一層腕を磨いたらしい。確かに人物画では、内面まで鋭く切り込んでいることが見て取れる。そして、最後は子供達への絵本の制作に没頭したと言う。

風景画ももちろん多数残しているが、今回の展示では、孫のいるイタリアへ何度も出かけ、ローマの街角を描い作品が多く鑑賞できる。これもまた素敵な作品が多い。

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↑夕暮れが迫るゴルフ場。画面上を大きくとって、別のホール、奥に広がる林と空を見せて独特の画面構成。

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↑ハンターと夕陽。森が主役になっている。

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↑カメラ的に一瞬眼前を横切る競馬馬を捉えた作品。やはり背景、木々や遠くの山に多くのスペースを割いている。

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パドックらしいが、差し込む日の光の描写を得意の画法(表面の絵の具を布でこすり落とす)でうまく処理している。他にも全面に大胆な塊を置くような構成がジャポニズムを思わせたり、光を玉状に置いていく、フェルメールの作品のような効果も試していたようだ。

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ジャズ・プレイヤーたち。遠景の子供の姿が効いている。

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家族の団欒。こういうのはノーマン・ロックウェルが得意としていた。因みに、⬇️はロックウェルの代表作。

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バーニー・フュークスは、とりわけ広告業界のグラフィック・デザイナーなどからは、以前から神様のような存在だったと、会場のスタッフから教えられた。会場の一角にはジクレー(仏語で噴霧するの意)版画と呼ばれるコンピューターによる複製画が即売されていた。概ね20~50万円。原画は当然100万円以上の値付けになるとか。それじゃ安いぐらいだ。

他にコンテによる作品が何点か展示されていたけど、これぞ彼の技術の卓抜さを如実に示すもの。元ソニーの出井社長の絵があったが、こりゃ家宝だろう、出井家にとっては。さらに、GRAYSという名前の入ったユニフォームを着た野球選手の群像を捉えた作品も印象に残った。例のジャッキー・ロビンソンメジャーリーグ入りするまで所属した黒人だけのチームだ。コンテだけで黒人の描写をするのは、結構厄介だと思うけど。

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↑若かりし日のエリザベス女王。いかにも気品に満ちている。

画像はインターネットから。