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平日の午後ということもあり、会場はまことに閑散。何人か配置されているスタッフたちも、すこぶる手持無沙汰のご様子。41点と、かなりこぶりな展覧会だが、展示されている作品は厳選された印象が濃い。
この人、1885年、ブルガリア出身のユダヤ人。本名はユリウス・モルデカイ・ピンカスと、なかなか大時代がかったもの。PINCASを並び替え、いわゆるアナグラムでPASCINと称するようになったと、結構ユーモアのある人物だったようだ。
若い頃にパリに出て、画家修行、だが第1次大戦が始まると、5年ほどニューヨークに「疎開」する。そこで、彼の絵には明るい色彩が多くなるのだが、南米旅行で、やはり好んで派手な色彩を用いるようになるレオナール・フジタに共通するものを感じた。
終戦後、再びパリに戻り、モンパルナス界隈を活動の舞台にして、いわゆるエコール・ドゥ・パリ(パリ派)の仲間入りとなるから、フジタとは当然交流があったろうことは想像に難くない。
エスキス(線描)を基本に据えた描き方は生涯ぶれることはなかったから、後年、それこそ朦朧体と呼べるような淡い色彩で、物象の境目がはっきりしないような描き方が顕著に見られるようになってからも、目立たぬ線描を施した作風を貫いたようだ。女性を対象にした作品が多く、何点かは北海道立近代美術館蔵になっている。
最晩年、1930年の「三人の裸婦」(北海道立近代美術館)。この年、恋人リュシー(Lucy)との関係に悩み抜いたこともあり、日頃から「人は45歳以上生きてはならない」という主張通り、自死を選んだ。三島由紀夫も確かそんなことを言ってなかったっけ?
(画像の一部はパナソニック美術館HPからお借りしました。)