ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「パレードへようこそ」

150410 原題:PRIDE 英 121分

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文句なしに佳作。1984年、サッチャー政権下で実際にあった話を映画化。監督:マシュー・ウォーチャス

当時、フォークランド戦争を勝利し意気上がるサッチャーは、国有企業の民営化に手をつけ、とりわけ当時最大最強の労働組合を持つ炭鉱の閉鎖を目論み、赤鬼と恐れらた英国炭鉱労組委員長アーサー・スカーギルと徹底的な闘争に入り、ついに組合潰しに成功。

この話はちょうどそんな折に起きた、レズビアン&ゲイが、敵の敵は友とばかり、痛めつけられている炭鉱労働者支援に乗り出し、街頭募金を始めるというもの。

とは言え、英国でもあの時代は、同性愛者が堂々とカミングアウトできる雰囲気ではないから、支援される側にも大いに戸惑いがあり、「支援はありがたいけど・・・」と、当初は受けることをためらう空気が支配的。

 そんな折、南ウェールズDulais Valleyにある小さな炭鉱街と、ひょうんなことから”連帯”することになり、提案したレズビアン&ゲイ側もLGSM(Lesbian&Gay Support Miners)という組織を立ち上げる。そして弱者同士、最初は双方に誤解や中傷などから脱落者が出るが、疑心暗鬼を乗り越え、運動は徐々に盛り上がり、ついにパレードの日を迎えるのだった。

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結局、炭鉱労組は潰されたが、逆に同性愛者たちの運動は、この連帯のおかげで、世間に認知され、日の目を見ることになったのは、同性愛者たちにとっても、予想外で、まさに望外の結末だったろう。

涙と笑いがたっぷりつまった2時間、久しぶりにほっこりした気分を味わわせてくれた英国映画。イメルダ・スタウントン(「ヴェラ・ドレイク」の演技がことさら印象に残る)、ビル・ナイ(「マリゴールド・ホテルで会いましょう」)など英国が誇る名優がいぶし銀の演技を見せてくれる。

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ビル・ナイ(左)とイメルダ・スタウントン(右)が集会のためにサンドウィッチを作っているシーン。実にまずそうで、まるで食欲が湧かないなぁ。

劇中で、最も感動的なシーンがこれ⬇︎Bread & Rosesの響きが素晴らしい。

ついでに、劇中なんども聞こえるのがGlory Glory Halellujahで始まるリパブリック賛歌。これはご存知、アメリカの歌だが、チャーチルのお気に入りでもあり、現在も有名サッカーチームの応援チャントとしても歌われることが多い。

蛇足ながら、ちょうどこの時期、イギリスに住んでいて、炭鉱労組とサッチャーさんの激烈な闘争は連日報道されていて、当然知っていたが、同性愛者たちが支援していたという、この話はまったく知らなかった。

#20 画像はIMdbとALLCINEMA on lineから。