ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ザ・クラウン」@Netflix

201216 THE CROWN 4 シーズン、全40話

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それなりに似た感じのキャスティングが冴えている。

現エリザベス2世の幼少時から現在までを描いた長編テレビドラマで、見せ場、まことに多く、見応えたっぷり!(ただし、数年前にNHK地上波でも放映した「ダウントン・アビー」には及ばない)

彼女の生きた時代を政治的、社会的、経済的な背景を細かく描写することで、迫真に満ちた構成となっており、近代英国史の一端とは言え、興味深く観察できた気がする。特にそれぞれ主要人物に似た俳優を内外から探したキャスティングが素晴らしい。英国出身の俳優が演じたのは当然として、中にはウィンストン・チャーチルを演じた米国人、ジョン・リスゴーなども混じっている。

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前半のエリザベスを演じたクレア・フォイ

エリザベスは幼少時は別として成人してしばらくはクレア・フォイが演じている。彼女、最近見たアメリカ製のドラマ「アンセイン〜狂気の真実〜」の主人公役とは到底同一人物とは思えぬほどの名演技は称えられてしかるべきだろう。セリフ回しは相当訓練を積んだのは当然として、気高い雰囲気を醸し出しており、中年以降を演じるオリヴィア・コールマンに勝るとも劣らぬ演技だった。

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後半はこうした役を特異とするオリヴィア・コールマン。さすがに堂に入った演技は見事!

左はチャールズ、右はフィリップ殿下、エディンバラ公

父親ジョージ6世を演じたジャレッド・ハリスも悪くなかった。それより、離婚歴のあるアメリカ女との恋にうつつのぬかし王冠を捨てた兄、エドワード8世、後のウィンザー公を演じたアレックス・ジェニングが、風貌も似ていることもあり、存在感は勝っていた。

まあ、こうして挙げていくとキリがないので俳優についてのコメントはこの辺にして、我々日本人の多くは英国王室のことなど、まずほとんど知らないのは当然。今のウィンザー王朝が、そもそもドイツ由来であることも、知っている人は多くはないと思われる。

だいたい、ヨーロッパの王室は元を辿れば繋がっているわけで、どこにどの国の血筋が入っているかなど、複雑すぎて、理解不能。いわゆる近親婚を繰り返してきているから、時に変わった人物、あるいは障害をもった人物が混じるのは当然で、本作でもちらっとそんな場面が含まれる。

日本の皇室に比べると、彼らはかなりオープンであり、一般人との交流を積極的に進めている点は評価できるような気がする。ただ、女王夫妻以外は、どうにもこうにもまともな結婚生活までもっていけた例が少ない点は、呆れる他はない。

前半はともかく後半では、脚色が派手というか行き過ぎと思われる箇所が頻出、おそらく側近たちからもたらされる噂話等を丁寧に集め、想像力を最大限膨らませて出来上がったドラマだろう。

一例を挙げると、日本でも報道されたことだが、こともあろうに女王の寝室に不審者が忍び込むという前代未聞の出来事も、ドラマでは克明に描かれるが、のちに女王自身、あるいは犯人の自白からすべて作り話であると判明している。ドラマでは、10分以上も女王と侵入した犯人との間に会話が繰り広げられたことにされていて、あり得ないと思いつつ、興味深く見た。

今はシーズン4までが見られるが、この後、5、6と製作されるようだ。おそらくダイアナの亡くなるあたりまでは、確実にドラマにするだろう。

そういえば、愚亭は1982年夏にロンドンに赴任したが、直前にフォークランド紛争終結した時期にあたり、サッチャー首相はそれまで打ち出した政策がことごとく批判の対象となっていたのに、この紛争の勝利で一気に支持率を上げ、以後、実に11年半にわたり英国首相であり続けた。ただ、女王とは女性同士、しかも同い年ということもあり、一時はかなり険悪な関係だったようだが、そのあたりも詳しく本作で描かれていて、これまた実に興味深く鑑賞した。

ちなみにサッチャーさんを演じた女優、本物に比べかなり小柄ではあるが、話し方は徹底的に研究したようで、画面をみないでいると本物かと錯覚するほどであった。