150324 原題:THE IMITATION GAME (邦題、余りに散文的過ぎる。何もこんな説明をタイトルに加えることはない!)英米合作 [監]モルテン・ティルドゥム(ノールウェイ人、「ヘッドハンター」)
いわゆる第二次大戦秘話。エニグマは知らない人はいないほどよく知られた独軍が誇る史上最強の暗号装置。それをロンドン郊外ブレッチリー・パークにある施設に集結した”天才”5人で解読を試みる。その中の一人、今あるコンピューターの原型を作り上げた天才アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)に焦点を当てて解読に至る軌跡を描く。
特注のマウスピースまで使って、チューリングを熱演したカンバーバッチは、実際チューリングとは遠縁に当たり、しかも同じ大学で学んだこともあるという奇縁。彼の実像に迫りすぎた余り、演技を通り越すほどチューリングになりきり周囲を驚かせたらしい。惜しくもアカデミー主演男優賞は逃した(エディー・レドメインが受賞)ものの、素晴らしい演技には心底驚き、カンバーバッチを見直した。
また、彼と何度か共演し、実生活でも親しいキーラ・ナイトリーの息のあった演技も見どころの一つ。
それにしても、50年もの長きに亘り、英政府は真実を公開せず、当時猥褻罪に当たる同性愛であったチューリングを、英国戦争史上最大の功績があったにも関わらず、ホルモン剤投与を強要、その結果死を招いたのに、服毒自殺と公表するなど、二重三重に彼の名誉を傷つけ続けた事実には驚愕せざるを得ない。
彼や、彼の一族が名誉を回復できたのは、つい最近の2009年9月、時の首相、ゴードン・ブラウン率いる政府による謝罪、さらに2013年12月、女王名による恩赦が発効し、キャメロン現首相も彼の功績賞賛の声明を出したとある。
エンドロールの前に、彼の功績により1400万の命が救われ、第二次大戦終結が2年早まったという字幕が流れる。多少の誇張があるとしても、改めて彼の偉大な功績を知ることに。
ついでながら、何度も聞かされていたイングランド中部コヴェントリー市の爆撃の件、事前に英軍はこの日、大規模な空襲が同市に対して独軍が計画していることを察知していたにも関わらず、解読した事実が独側に漏れるのを警戒し、同市と何千という住民を犠牲にしたとされるが、その事実はないと正式に発表された由。”その日”と大規模空襲までは察知できたが、”どこ”かは掴みきれなかったと。いずれにしても、その真実は誰がいつどのように知ることになったのか、謎は残る。
#20 画像はALLCINEMA on lineから。