200114 LE COLLIER ROUGE(赤い首輪)87分、仏・ベルギー合作 脚本・監督:ジャン・ベッケル
舞台は1919年夏、フランスの片田舎。軍判事でもあるランティエ少佐はリタイア直前の最後の仕事として、汗を拭きふき、村にやってくる。留置されている元兵士モラックの取り調べで、早いとこ決着をつけて穏やかに引退したいと考えている。
留置所まえに、一匹の黒い大型犬がしきりに吠え立てている。そこには深い事情があったのだ。
という具合に始まる作品、同監督の「クリクリのいた夏」や「ピエロの赤い鼻」にどこか共通する香りがのっけからプンプン匂う。ちなみに製作者の一人、ルイ・ベッケルはジャンの息子であるから、ジャック・ベッケルから三代続けての映画人ということになる。
第一次大戦で、酸鼻を極めた独軍との塹壕戦に兵士として取られ、農作業もままならない悲惨な境遇に陥る家族を扱った作品が少なくない。昨年夏にみた「田園の守り人たち」もそっくりな設定であった。
本作では赤い首輪をしたこの黒い犬が重要な役割を担っていて、その演技は間違いなく表彰もの。
負傷するも戦功を立て、レジョン・ドヌール(フランスの最高勲章)を授与されたジャックがなぜ留置され、さらに、妻と息子の待つ家に帰りたくないと片意地をはるのか、謎が明かされて終わる。
それにしても、仏独の塹壕戦のむごたらしさと無意味さは「西部戦線、異常なし」に詳しいが、互いに兵士だけを犠牲にして、実に500万人を無駄にした消耗戦!最前線の兵士たちには厭戦気分が横溢、ついに兵士同士が肩を組み合う寸前まで行く場面が本作に描かれている。画面では、安南人という字幕が出るが、ベトナム人のことで、祖国から遠く離れたところで、肉弾戦で命を落としたベトナム人が少なからざるいたという事実にも驚かされる。
いかにもジャン・ベッケルらしい作品。見に行ってよかった。
#1 画像はIMBdから。ネトフリとアマゾン・プライムのせいで、本年、映画館で見たのはやっと1本目!