ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ミケランジェロ・プロジェクト」

151116 原題:The Monuments Men 米 118分

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期待していただけに、ちょっと落胆!ジョージ・クルーニーは、近年、出演より製作、監督に意欲を燃やしているようで、監督作品にも「グッドナイト&グッドラック」のような佳作もあり、なかなかの才人として知られる映画人。

でも、本作は、何となく中途半端、掘り下げ方も不十分で、散漫な印象を与えた作品に。事実、本人もそれほどの自信作でなかったのか、観客動員数をかなり意識していて、ソニー・ピクチャーズ会長宛のメールで不出来を詫びたとされている。

ナチが各国から略奪した美術品を分散秘匿している事実を掴んだ連合軍が、これを奪還すべき、特別な部隊を編成。そして、Monuments Menと呼ばれる選りすぐりの美術史家、芸術家、学芸員ら男女合わせて345名が集められる。彼らにとっては、人類の貴重な遺産を自らの手で取り戻し、元の所有者に返還するという、限りなく意義ある仕事とは言え、戦地に赴くからには、一応の戦闘訓練を受ける。時間的制限もあり、どうしても付け焼き刃的にならざるを得ない。その結果、図らずも戦闘に巻き込まれ、命を落とす隊員(「ダウントン・アビー」の公爵役、ビュー・ボネビル、「アーティスト」のジャン・デュジャルダン)も。

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ヒトラー自身、もともと絵描きを目指したぐらいだから、殊更美術品略奪には執念を燃やした。どこまで芸術が分かっているのか、⬆︎腹心のゲーリングまで、にわか収集家気取りで、自分のコレクションをちゃっかり増やしていたらしい。

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蔑みを込めて同胞からコラボと呼ばれた対独協力者の一人、⬆︎クレール(ケイト・ブランシェット)から収集品のありかについて、情報収集をするメトロポリタン美術館学芸員のジェームス・グレンジャー(マット・デイモン)。当初、アメリカがナチに代わって、自国に持ち去るのではと疑われ、協力を得られない。実際に、彼が所有者の判明した作品を所有者に返還する行動を見て、彼女もMonuments Menに積極的に協力し始める。

結局、ソ連軍が到着寸前まで、奪還作戦を続けたおかげで、最大の目玉の一つ、ブルージュ聖母教会所蔵、ミケランジェロの聖母子像⬇︎を確保、かくして、2名の尊い犠牲者は出したものの、所期の目的を達成するのだった。

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ミケランジェロ作の彫刻はそれほど多いわけではなく、ましてイタリア以外となると極めて貴重と言わざるをえない。それだけに、これを取り戻すことは、奪還作戦の中ではも象徴的なことだったのだろう。邦題も、それを強調したかったんだろうか。

アカデミー賞受賞、あるいはノミネートされた俳優がずらりと並ぶ豪華なキャスティングだけに、作品が平凡では、ちょっと惜しい気がする。ケイト・ブランシェットは、役柄、すこぶる地味な出で立ちで、フランス語訛りの英語をボソボソ話す、見るからに持てない役を好演。

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