ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ティツィアーノとヴェネツィア派展」@東京都美術館

170215 午後はヴェネツィア派絵画を観、夜はヴェネツィアに因縁のあるオペラ「オテッロ」を観るという具合で、図らずも自分にとってはヴェネシアン・デーとなった。

例によって、高齢者無料日の特権をフル活用して、午後の遅い時間を狙って都美術館へ。

そういえば、昨年、夏から秋にかけて国立新美術館で開催された「

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」という展覧会に行ったのを思い出し、「半年後に、東京で再びヴェネツィア派かよ!」という気持ちがないわけではなかったが、申し訳ないが国立新美術館のがすっかり霞んでしまうほど、今回のヴェネツィア派絵画(と言ってもティツィアーノがほとんどだが)のレベルが抜きん出ていたと思わざるを得ない。それほど、すっごい作品が揃ったということだ。

ティツィアーノ・ヴェッチェッリオ(1490-1576)は、当時としては、結構長生きした方だろう。86歳ということで、ちょっと前のミケランジェロが89歳、さらに前のダ・ヴィンチが67歳ということで、いずれも、長命を保ってくれたおかげで、後世、我々はこうして多くの傑作を楽しむことができるわけだ。

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まずは、⬆︎これ!あまりにも知られた傑作「ダナエ」(1544-46)だが、日本初来日だったとは!自分の目で観たのは、50年以上も前のナポリはカポディモンテ美術館だったのか。もはや記憶が定かではない。この作品が見られるだけでも、本展は価値がある。ゼウスが、金貨に化けてダナエと交わるという微妙な瞬間を捉えた絵柄。右の天使が「まじかよ!」とばかりに見上げている表情もいいが、観念したかのようにきっと目を見開き、口元を結んだダナエがあまりにも官能的だ。

ついで、この「フローラ」(1515年頃)は最も若い頃の代表作。ウッフィーツィ美術館蔵。

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これまた傑作中の傑作。衣紋の描き方一つとっても、どんだけ凄いワザ持ってんのよ、と思わせる。さらには、髪の毛の描き方、特に左肩にかかる髪の繊細なタッチにはため息だ。聡明そうな表情が、見るものに強い印象を与えないではおかない。

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同じくティツィアーノで、1543年の「教皇パウルス3世」やはりナポリのカポディモンテ美術館蔵。この年老いた教皇の、衰えぬ眼光、顔と両手の皮膚の質感、衣装のえも言われぬ色調、椅子の手すりの同じく色調、質感、どこを見ても超一級品であることが分かってしまう。

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1567年制作「マグダラのマリア」@カポディモンテ美術館 涙に濡れた瞳を大きく開いたマグダラのマリアの思いつめた表情、モダンな柄の衣装も印象に残る。

ティツィアーノの前には、ヤコポ・ティントレットも、パオロ・ヴェロネーゼもいささか見劣りしてしまうのだが、ヴェロネーゼのこの作品は素晴らしい!

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聖家族と聖バルバラ、幼い洗礼者聖ヨハネ」1565  ウッフィーツィ美術館蔵 左側の聖バラバラの黄金の衣装の質感たっぷりの描き方には驚嘆するしかない。

ともかく、これは必見の展覧会!上の5点だけ見ても充分上野まで行く価値がある。

それにしても、これらほとんどの傑作が本家のヴェネツィアにはない、というのはヴェネツィア人には辛いところだろう。