ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「アムール 愛の法廷」

170601 原題:L'HERMINE (白貂)仏 98分 脚・監:クリスチャン・ヴァンサン(「大統領の料理人」2012)

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今は裁判長をしている、厳格・冷徹で知られるミシェル(ファブリス・ルキーニ)、乳幼児殺害事件の公判中に陪審員に顔見知りの女性がいるのに気づく。何年か前、入院中の担当医、ディット(シセ・バヴェット・クヌッセン)であることを思い出す。休憩時間に、早速メールで、その日の公判終了後、近くのカフェで会いたいと連絡。

実はミシェル、妻とはこのところうまく行っておらず、周囲にも心を閉ざした接し方しかできない。

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⬆︎この不思議な原題だが、どうやら裁判長のこの派手なコスチュームのことらしい。そう言えば、肩周りの帯状のものは白貂のようにも見える。法衣は一般的にはどの国でも黒が基調だが、これは珍しい。

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「あら、あの裁判長、どっかで見たかしら?」

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入院中、彼の手を握ってくれたのを忘れられずにいたのだが、どの患者にも励ますためにそうしていてたと彼女からあっさり告げられてしまう。(つまり、ミシェルの勘違い?)それでも、自分の彼女に対する思いを伝えようとするミシェル。その一途さに次第に心を開くディット。

彼女との再会がミシェルの心に微妙な影響を与え、それまで冷酷な判決を下すことで知られていたミシェルが、最後には乳幼児殺害の主犯と見られた父親に一転、無罪判決を下してしまう。

ディットには夫と高校生の娘がいて、到底二人の仲が進展するとは見えないのだが、そのことは大した問題ではないと言わんばかりの終わり方には違和感があるし、ミシェルの心理描写をもう少し掘り下げてくれないと、ご都合主義的な印象を持ってしまい、物足りなさを感じた。

フランスの裁判の様子や陪審制度が描かれていて、なかなか興味深かった。それと、今更だが、フランス語は、法廷用語にはうってつけの言語のような気がする。Ce qui n'est pas claire n'est pas français(明快ならざるもの、フランス語にあらず)と言われるように、ミシェルが最後に下す判決を聞いていると、まさしくそう思えてくる。

この邦題、いささかとってつけたようではあるけど、この原題はそのまま訳しようがないし、やはり邦題の方がいいように思える。

#30 画像はIMDb、およびALLCINEMA on lineから