190305 GREEN BOOK 米 130分 監督・脚本(共)・製作(共):ピーター・ファレリー アカデミー作品賞受賞(監督賞を逃して作品賞を取った事例は過去4回しかない)またマハーシャラ・アリーは本作でアカデミー助演男優賞獲得。ヴィゴ・モーテンセンは主演男優賞を逃しはしたが、見事な演技で、個人的にはボヘミアン・ラプソディーで受賞したラミ・マレック以上と思う。脚本、製作に名を連ねるニック・ヴァレロンガはトニー・リップの息子。ずーっと企画を温めていたらしい。
粗野で無教養なイタリア系アメリカ人、トニー(ヴィゴ・モーテンセン)が、まだ人種差別の激しかった当時(1962年の設定)、逆に教養ある黒人ピアニスト、ドクター・シャーリー(マハーシャラ・アリー)の演奏旅行の運転手を務めるというロードムーヴィー。実話がベース。
あの時代にこうした優れた黒人ピアニストが存在していたことすら知らないし、まして公民法成立前のアメリカで、白人二人(ヴァイオリニスト、チェリスト)とトリオを組んでの演奏旅行とは言え、わざわざ差別が一段と激しいディープ・サウス(深南部)へ演奏旅行するという行動自体、信じがたい。ある種、肝試しと本人は後に語るが。
一方のトニーだが、腕っ節の強さを買われて、夜の世界で用心棒として生計を立てていたのだが、一斉手入れであえなく失業。外見的には粗暴だが、家庭では優しい父親であり妻を愛する夫、イタリア人の大家族主義を体現するかのような生活ぶり。
およそ考えられないような組み合わせで意気揚々、ニューヨークを高級車で出発した二人(まったく同じタイプのもう一台にはヴィアオリニストとチェリスト)だが、果たせるかな、至る所で厳しい差別を受ける。あちこちで騒動を繰り返しながら8週間にわたって旅は続く。
その間の二人のやりとりが全体の軸になっている。生き方も考え方も正反対の二人が時間の経過と共に、”何か”を次第に共有していくところが感動を呼ぶ。最後のシーンでジーンとなるが、その辺は脚色だろう。
全体に笑えるシーンが多かったのだが、現在も依然として残る人種差別や人種隔離で悩める国で、この種の作品はどう受け取られたのか、甚だ興味をそそられる。日本人なら、人ごととしてただ笑って鑑賞しているのだが、本国ではそうとは行かないだろう。
ヴィゴ・モーテンセン、随分作品を見ているが、今回演じたような役は一度もやっていない筈。どちらと言えば、暗く深刻なやくどころが多いし、またそうした雰囲気をどっぷり身につけているから。この役のために10kg増量したと聞く。いつもはとんがった顔がまるまるとして別人の如し。ナポリ方言を喋るシーンもうまくこなしている。
ちなみに、ヴィゴはニューヨークのマンハッタン生まれ。モーテンセンの姓で分かるが、父親はデンマーク人、母親はアメリカ人。両親はノールウェイで出会ったというし、その後、ヴェヌズエラやアルゼンチン暮らしも長い。当然、北欧語、スペイン語も堪能という、バリバリの国際人。
#12 画像はIMDbから。