190905 ONCE UPON A TIME IN HOLLYWOOD 161分 米 製作(共)・脚本・監督:クエンティン・タランティーノ
1969年のハリウッド、落ち目の西部劇スター、リック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)と、相棒で彼のスタント役、クリフ・ブース(ブラッド・ピット)の二人が主人公。
一応、ハリウッドの豪邸に住んでいるものの、隣に売れっ子監督ロマン・ポランスキーと、これまた今をときめく女優シャロン・テート夫妻が引っ越して来たことから、いやでもいっそう凋落感を味わうことに。
なんとか這い上がろうと二人で策を練るが、西部劇全盛時代が終焉に向かう流れは止めようがない。名プロデデューサーからの勧めもあり、マカロニウェスタンに出演することにして、なんとか活路を見出すのだった。
時はベトナム戦争末期で、特に若者の間には厭戦気分横溢、ヒッピーが跋扈し、その流れをうまく利用した、怪しげな宗教教祖的チャールス・マンソンなども登場し、全米を震撼させたシャロン・テート事件が起きる。こうした当時の世相や事件を背景にし、実在の人物も取り込みながら構成していく術はタランティーノらしく、冴えている。
本作では、マンソンに巧みに操られた若者がリックたちの家に殺人目的で忍び込んではみたものの、たまたまヒッチハイクで乗せたヒッピーからもらったLSDを飲んでラリっているクリフが相手では、どうにもならない。さらに、クリフに飼いならされた猛犬に攻撃され、そこに駆けつけたリックが、以前撮影に使った火炎放射器を持ってプールで暴れまわる女を焼き殺すシーンはいかにもタラちゃんらしく、笑ってしまった。
リックにはモデルがいるらしいが、愚亭にはマカロニウェスタンと聞いて、こりゃクリント・イーストウッドに違いないと思った次第。
それにしても走っている車、街並み、人々の服装などなど、時代感がたっぷり、ついでにMrs. Robinson(Simon&Garfunkle)など、当時のヒット曲が次々に出て来て、あの時代の郷愁に浸れる。
それになにより、ディカプリオとブラピという贅沢な共演は、タラちゃんだからできたのだろう。この二人、普段から仲が良く、息もピッタリだし、今後も共演作が生まれる可能性がある。
シャロン役のマーゴット・ロビー、確かにどことなくシャロンに似ているかも知れないが、やや上品さに欠ける。「アイ、トーニャ、史上最大のスキャンダル」2017、「二人の女王 メアリーとエリザベス」2018 ほかでも見ているが、あまり好きなタイプではない。
撮影所でブルース・リーと思しき東洋人が登場し、例の奇声を発しながら、クリフと格闘するが、あっさり倒されてしまうのには正直がっかり。あのシーンはなんのために入れたのか。ブルール・リー役を何人かめぼしい東洋武術家に話に行ったらしいが、内容を知って、断られたという。そりゃそうだよ、こんな役、誰がやるかって。
さて、触れておきたい俳優がもう二人。一人はダコタ・ファニング。現在、NETFLIXで見ている「エイリアニスト」では、かなり肉付きのいい婦人警部役を見ているところだが、本作では、マンソンのアジト、ヒッピーたちの根城である郊外の牧場で若い子たちを束ねるやり手ババアのような役を演じていて、よく見ないと分からないほど。ほんの端役だが、なんでも演じ分けられる才能はなかなか。
ついでに、子役のトゥルーディ役のジュリア・バターズが単に可愛いだけでなく、見事な演技を見せる。撮影時8歳らしいが、末恐ろしいほど。寝たきり老人としてほんの一瞬しか出てこないが、ブルース・ダーンが見られたのも嬉しいね。
エンド・クレジットの出し方も、当時はやりのスタイルと色彩を踏襲している。ところで、ONCE UPON A TIME IN・・・は「昔々、あるところに」であり、かつて、タラちゃんが尊敬するセルジョ・レオーニ監督のONCE UPON A TIME IN THE WEST,それとONCE UPON A TIME IN AMERICAがある。もちろん、このタイトルを借りたのだ。
#53 画像はIMDbから