ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

オペラアリアをジャズ風に聴く夕べ

211007

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蒲田を本拠地とする我が合唱団の贅沢な指導陣のお一人、テノール猪村浩之さん(二期会)が出るというので、団からも大挙して夕闇迫る大井町の駅近ホール、きゅりあん(小)へ。

オペラとジャズ、コラボかフュージョンか、珍しい顔合わせとなり、興味しんしんでした。この「かなでびと」(おしゃれなネーミングですねぇ!)というユニット、すでにこれまでもいろいろ意欲あるプログラムで活動を続けてきたようです。

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ご覧のように、曲名と作曲者/作詞家の名前の記載

誰がどの曲を演奏するか、あえて記していないのがミソで、聴衆に想像をかきたてるのでしょう。「多分、この歌はこの人がやるんだな」とかと思っていると、かなり裏切られました。

いきなりのベートーベンですが、これはジャズのトリオが口火を切り、やがて押川浩士さんが登場してら・ら・らで歌い始め、テノールに受け継がれ、口笛も登場という趣向。「フムフム、そう来るか」ってな感じです。

2曲目、Je Te Veuxは口笛演奏、3番の「椿姫」の乾杯の歌は、ここは当然オペラ歌手が、と思えばさにあらず、ジャズのトリオのみ。ピアノのアレンジが冴えます。セビリアは、ジャズ色はほぼなしで、正統派の「私は街のなんでも屋」を押川さんが見事に歌い上げます。この方、いつもおちゃらけるので、こちらもつい余りじっくりと聴くことがなかったのですが、今日はこの人の実力ぶり、思い知らされました。びっくりです。大したバリトンです。

そしてお次が、やってくれましたよ。「星は光りぬ」@Jazzってことで、プッチーニさん、かなりずっこけたと思いますよ。このアレンジは凄い。中野さんでしょうね。しかし、歌うのも結構きついアレンジだったでしょう。何十回もこのアリアは歌っているはずでも、いやだからこそ、こう言うふうにジャズ風に歌う、しかし原曲の良さも維持しないと、というそこのバランスを取るのさじ腐心しただろうと思いました。

この猪村浩之さん、一応二期会所属でオペラ歌手でもあるのですが、最近、芸域を徐々に広げ、こうしたジャズやポップスの領域へ活動もどんどん目立ってきています。

6曲目のボレロはドラムスと口笛がメインでした。同じリズムを延々と刻み続ける根気が絶対条件の曲です。一部最後の楽曲はこのユニットのオリジナルで日伊ミックスの歌詞に中野雅子さんが曲をつけたものです。YouTubeにアップされていたので、前に聞いていましたが、生で聴くのはもちろん初めてです。日本人によるカンツォーネという風情の曲でした。

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後半はジャズの演奏から始まり、ハンガリー舞曲は押川さんのスキャット、ダバダバ、ドゥビドゥビで軽快に。そして、魔笛の夜女は口笛であの超難しい最高音を繰り返し出すところを見事に吹いて、大喝采を浴びていました。

6番目の「ル・ローヌ」は想像どおりLe Rhône、つまりスイスからリヨンを通って遥か地中海へと流れる大河のことでした。服部克久作曲で、作詞がなんと中野雅子さんというから、ま、さやはり只者じゃないんですね、この方は。

ラスト、TIME TO SAY GOOD BYEは、押川さんの低音から始まり途中から猪村さんのテノールが加わり、デュエットで壮大なエンディングへと、掉尾を飾るにふさわしいものでした。実はこれ、我が合唱団、前回(19/12/14)の定期演奏会で歌ったので、その時をみんな思い出していたと思います。

アンコールは口笛から静かに始まるケルティック・ウーマンのYOU RAISE ME UP、いやあ素晴らしい演奏会でした。8時ちょっと前に終演でした。この約3時間後、震度5が!!!聴衆はすぐ帰っていれば問題なく帰宅できたでしょうけど、出演者たち、撤収作業で時間を取られたはずですから、ちゃんと帰れたんでしょうか。

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