211008 米 90分、監督:アントワーン・フークワ、この作品のオリジナルはデンマーク製で、すでに見ていますが、アメリカ製のリメイクにも興味を惹かれて見てしまいました。ジェイク・ギレンホールがどんな演技をするか、それも楽しみだったのと、リメイクの仕方そのものにも関心がありました。
舞台はロサンゼルス、折りからの山火事で、大騒ぎになっています。それが画面に大写しになったまま、ここLAPDの通報センターでは、数人のスタッフが、かかってくる緊急と思しき電話に対応しています。ジェイク・ギレンホール扮するジョー・ベイラーもその一人。
⬆︎気味の悪い図柄ですねぇ。ギレンホールの顔にイミシンな単語を並べています。実はこのジョー、この時、結構やばい状態なんです。ま、それは置いておくとして、たまたま取った一本の電話、それは女の泣き声で、周囲の物音から走行中の車の中からと彼は想像します。
結局、彼は最初の判断ミスから、どんどんと深みにはまっていくのを、声だけで表現していきます。聴覚認識だけでは、とんでもないことが誰にも起こりうるということでしょうか。てっきり男に誘拐される最中の女と最初のやりとりだけで判断してしまうという、ある意味、他の誰かがこの電話を取っても似たような経過をたどったことは想像にかたくありません。
かなり複雑な事情が絡み合った”事件”、彼の女に対する指示ミスも重なって、とんでもない結末になり得たわけですが、結果オーライで、「よくやった!」とねぎらいの言葉すら仲間からかけられます。これを経験したことにより、ジョーは自分がかつて引き起こした事件の裁判を翌日に控え、昔の相棒に口裏合わせまで頼んでいながら、いさぎよく有罪、ギルティーを受け入れます。
ラスト近く、女性でヒスパニック系の上司から、ジョーはてっきり死亡していると思っていた幼児が生きていると知らされる場面で、上司が口にした"Broken people save broken people."(「失意の人は同類を救うのね。」)が素晴らしかったです。この上司、ちゃんとジョーの心情を見抜いていたんですね。見て見ぬふりかと思ってたら、完璧に把握してました。すごいです。
ギレンホール、熱演です。迫真の演技というとなにかやすっぽくなっちゃいますが、多分、かなりアドリブも交えてのしゃべりだったようです。彼の義理の兄にあたるピーター・サースガード、イーサン・ホーク、ポール・ダノという錚々たる男優陣が声だけの出演でキャストに名前を連ねているのにはちょっとびっくり。フークワ監督の人徳なんすかねぇ。
この作品、撮影に入ろうとしたらコロナ禍でロックダウンとなり、外での撮影を断念、監督自身も自分のヴァンの中で機材を並べて指示を出して撮影したそうです。それもたったの2週間!実に省エネでの撮影だったようです。それにしちゃ、よくできています。オリジナルのデンマーク製が優れていたので、リメイク不要とする評価もありますが、これはこれでよかったというのが見終えた愚亭の感想です。