ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「パワー・オブ・ザ・ドッグ」@Netflix

211223 THE POWER OF THE DOG, 127分、米・英・豪・加・NZ(いわゆるファイブ・アイズ)舞台はモンタナだが、撮影はすべてNZ。原作:トーマス・サヴェッジ、脚本・監督:ジェーン・カンピオン。1954年ウェリントン生まれ、見るからにマオリの血を引く生粋のNZ人。1993年の「ピアノ・レッスン」(THE PIANO)が日本での鮮烈デビューで、よく覚えています。

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この題名、よく分かりません。舞台となる土地のかなたには雄大な山岳地帯が広がっていますが、よく見ると、犬が吠えているような影ができていることが分かります。その辺りがタイトルのヒントになったかもです。

恐ろしい結末が待っていますから、どこまで書けばいいか・・・。フィル(ベネディクト・カンバーバッチ)とジョージ(ジェシー・プレモンス)というバーバンク兄弟がモンタナで牧場を経営していて、割とはぶりはよいようです。神経質な兄とおっとりした弟が対照的に描かれます。カンバーバッチにしては珍しいやくどころです。

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嬉しそうな新婚の二人。

ジョージは近く、と言っても広大なところですから、実際にはかなりの距離はあったんでしょうが、時折、牧童も引き連れて食事に行く食堂の経営者である未亡人ローズと結婚するのですが、彼女の連れ子ピーターも含めて、兄のフィルは二人を毛嫌いします。それがどこに根ざしているのか語られません。と言って、兄弟仲は特に悪くはないのです。

連れ子のピーターは学究肌で、あまりにも環境の違うフィルたちとは普段口を利くこともないまま過ぎていきます。ところがある日、あることをきっかけに、嫌っている同士、フィルとピーターが急接近します。二人の間に何が生まれたのでしょうか?

ジェーン・カンピオン、今、67ですが、すごい作品を作ったものです。彼女はどういうわけか未亡人役のキルスティン・ダンストがお気に入りで、彼女をイメージしてこの作品を考えていたそうです。確かにハマり役で、美しいというより醜い役柄をうまく演じています。これも本作の見どころでしょうか。

ちなみに、彼女の実生活でのご主人はジョージを演じたジェシー・プレモンスで、二人はテレビ映画の「ファーゴ」でも夫婦役で共演しています。ジェシーは愚亭が最近見た長い、長いドラマ「ブレイキング・バッド」にも後半、重要な役で登場していました。金髪の眉が特徴的で、一度見たら忘れられない顔です。イケメンからは程遠いですが、チャーミングです。

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何が彼を孤独に追いやったのでしょうか。

 

生粋のイギリス人であるカンバーバッチも、最近アメリカ語をしゃべる作品に結構登場していますが、こうした、いわゆる悪役は珍しいのではないでしょうか。まあ、新境地を開いたというのは大袈裟かもしれませんが、彼の別の面を見た思いです。役作りのためもあって、撮影中、キルスティンとはほとんど口を利かなかったそうですし、またシャワーも浴びず、ひたすら普段は吸わないタバコを吸い続けたというから、入れ込み方も尋常ではなかったようです。

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オープニング・セレモニーでのカンピオン監督とカンバーバッチ