ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」@東京都美術館

220318 この美術館、2年数ヶ月ぶりに来館。またネットによる事前予約制で来たのも今回が初めてです。スマホ画面を提示するだけですから、便利なこと、この上なし。最近ではコンサートも多くこの方法を取り入れています。なんと言っても切符なしですから、双方にとって大きなメリットがあります。これもコロナ禍で主流となりつつあるシステムの一つかも知れません。

予約制ゆえ、入場者数は一定数に絞られており、ゆったり見られるのもいいですね。

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本展の超目玉の解説は以下、HPから引用します。

17世紀オランダを代表する画家ヨハネス・フェルメールの《窓辺で手紙を読む女》は、窓から差し込む光の表現、室内で手紙を読む女性像など、フェルメールが自身のスタイルを確立したといわれる初期の傑作です。1979年のX線調査で壁面にキューピッドが描かれた画中画が塗り潰されていることが判明、長年、その絵はフェルメール自身が消したと考えられてきました。しかし、その画中画はフェルメールの死後、何者かにより消されていたという最新の調査結果が、2019年に発表されました。
本展では、大規模な修復プロジェクトによってキューピッドの画中画が現れ、フェルメールが描いた当初の姿となった《窓辺で手紙を読む女》を、所蔵館であるドレスデン国立古典絵画館でのお披露目に次いで公開します。所蔵館以外での公開は、世界初となります。加えて、同館が所蔵するレンブラント、メツー、ファン・ライスダールなどオランダ絵画の黄金期を彩る珠玉の名品約70点も展示します。

ドレスデンは2度行ったことがあります。2度目は退職後の一人旅でじっくりと見学したので、当然、この美術館にも行き、フェルメールにもちゃんと挨拶しています。ちなみに、フェルメールはもう1点あり、「取り持ち女」というフェルメールにしてはかなり大きな作品ですが、あまり評価は高くないようです。私もあまり好きな作品ではありません。

この手紙の女ですが、もちろん、当時は”キューピッド”はおりませんでした。修復が完成したのは2019年というので、割に最近のことです。修復後のお披露目が所蔵館に次いで東京というのが嬉しいですね。

しかし、本展のタイトルですが、フェルメールはいいとして、17世紀オランダ絵画展というのは、いささか大きく振りかぶりましたかね。全部で70点、うち油彩画がフェルメールを含めて61点です。

内容的にはフランス・ハルスの初期の小品が2点、メツーの、やはり小品が5点、ヤン・ステーン、3点、ライスダールの大きな風景画が2点、そしてレンブラントが1点でしょうかね、見どころは。

さて、問題の「窓辺で手紙を読む女」です。修復前はこんな姿でした。

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修復後は、

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上下で発色が違いますが、上の画像の方がより本物に近いようです。誰がいかなる理由から勝手に原画の一部を塗りつぶしたのかは今では分かりません。フェルメールの死後、かなり早い段階で作業がなされてたことが判明しています。

この画中画はいわゆる寓意画という体裁で、キューピッドが嘘や欺瞞を表す仮面を踏みつけていることで愛の勝利を意味するものと考えられるということですから、これを消し去るというのは、なんという暴挙と言わざるを得ません。

でも、寓意はともかく、単純に絵画作品として鑑賞すると私には修復前の方がしっくりくるのですがねぇ。キューピッドがいると、なんか奥がごちゃごちゃした印象になっていませんか。

ついでですが、右手前のカーテン、これって部屋にかかっているのではなく、作品にかかっているように見せているそうでう。こういう技法は当時他の画家もやってたとか。

それと手前のいかにも厚手のカーペット風の、これはテーブルクロスなんでしょうか。果物籠が置いてあるし、高さからするとやはりテーブルを覆っています。同じような厚手カーペット風生地はフェルメールの作品には多く登場しています。

この作品、なんと当初はレンブラントの作品として扱われていたというから驚きます。あの時代、レンブラントは圧倒的な存在で、しかも多作でしたから、無名のフェルメールは相手にされてなかったようです。

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「若きサスキアの肖像」1633 レンブラント

なんとも蠱惑的な表情のサスキアです。レンブラント27歳で、彼女と婚約した時のものですから、こういう表情もまあまあありかな。ちらりと上の前歯が見えます。いかにも豪華そうな衣装の描き方もすごいです。肩にある飾りなど浮き上がって見せています。さすがレンブラント!この時、フェルメールはやっと1歳!

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おなじみのライスダール。1665 城山の前の滝

オランダで風景画と言えば、まっさきに出てくるのがライスダール。同じような作品がごっそりあります。いささか食傷します。上手いんですがね。

本展はフェルメールが見られるだけで、ものすごい価値がありそうです。それも超話題になった修復後の作品です。今は東京でしか見られないのですから。

今日は生憎の氷雨でした。最近、美術館で過ごすと疲れ方がはんぱではありません。長くいるのは苦痛になり、鑑賞気分ではなくなるので、今日も40分ほどで切り上げました。

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左は改装中の国立西洋美術館。奥はJR上野駅新公園口です。