ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ダウントンアビー、新たなる時代へ」@Amazon Prime

230614 Downton Abbey: A New Era 監督:サイモン・カーティス、原作:ジュリアン・フェロウズ

言わずと知れた、劇場用映画の第2作。1928年の設定で、一応の区切りとでも言うように、ついにあのあばあちゃま、クローリー家のヴァイオレット・グランサム(マギー・スミス)が亡くなり、新たな命の誕生があって、幕となります。

本作は、いきなりこれだけ単独で見ても、感動はやや薄いかも知れません。イギリスのITVで放映されたテレビドラマを見ていると、伝わり方が一味も二味も違うでしょう。それほどのインパクトがありました。

イギリスのあの時代、つまり19世紀から20世紀初頭にかけての貴族の暮らしぶりや、彼らに仕える使用人たちの日常が鮮やかな対比で描かれ、タイタニック号の沈没やら第一大戦やら、スペイン風邪やら、時代時代のできごとを絡ませながら、小気味良いテンポで描かれたからこそ視聴者を惹きつけて止まなかったのでしょう。

やはりこれは長い、と言っても、6シーズン、52話だから、現在のTVドラマシリーズで言えばことさら長いとまでは言えないかも知れませんが、当時、つまり2010~15年頃では堂々たる長編だったのは間違いありません。NHKの総合でも放映されていましたし、結構夢中で見たものです。

そういうわけで、いささかノスタルジックな気持ちで視聴しました。当然ながら、みなさん、それなりに年をとって、こちらも同様ですから、心地よく感情移入ができました。

クローリー家の長女のメアリー(ミシェル・ドッカリー)が堂々たる当主となって、落ち着いた表情、声のトーンも低めで、たいそう演技力も増していました。使用人側で一番驚いたのは、さまざま嫌な事件を起こしていたトーマス・バロウ(ロバート・ジェームス=コリヤー)がなんとカーソンの後を継いで使用人トップの地位にいることでした。

いろいろ悩みを抱えたり苦しんだりしていたカップルがみんな幸せな家庭を築いていて、上(貴族)も下(使用人)も順風満帆という格好です。そして、おばあちゃまの死、まあ大往生で、息を引き取る瞬間まで家族や使用人が傍で最後の会話をしていて、その雰囲気がとてもよかったので、いい幕切れとなりました。