230709 2022 イタリア 1h45m ロカルノ映画祭出品作品 監督:ミケーレ・ヴァンヌッチ(ローマ出身、36歳の鬼才)
これまた暗い作品で、後味、すこぶる苦し。でも、見応えたっぷりでした。それは多分、舞台となったこのポー川デルタの特殊性ゆえかと思いました。北イタリアでも特に冬の気候がすこぶる悪くいつも霧が立ち込め、じめじめっとした雰囲気に満ちた地域です。まずはこうした背景を頭に入れておくと、この映画の展開にも合点が行くだろうと思われます。
そしてこの広大なポー川デルタですが、アドリア海の対岸130kmほどでクロアチアと向き合っているのです。これも押さえておくべき重要なポイントかと。
物語は、馬鹿でかい川魚が獲れるので、常に密猟者で賑わう流域で、地元漁民が監視の目を光らせなければならないほど、事態が悪化してきて、その先頭に立つ兄妹と、外国からの密猟者の中心人物との血みどろの対立と陰惨な結末を超クローズアップ映像を巧みに組み合わせつつ描きます。
ラストシーンがまたやるせない気分にさせますが、遺体を乗せたボートが徐々に沈み始め、水が顔を覆っていくところはやや荘厳な気分にさせられます。アレッサンドロ・ボルギとルイージ・ロカッショの重厚な演技も見応え十分。これも佳作です。