ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ヴィルトーゾ・フィルハーモニー第45回定期演奏会@アプリコ大ホール

180113

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このアマオケ、もう10回ぐらい聞かせていただいている。今日は割に珍しい演目ばかりで、特にドボルジャークの交響詩「野ばと」は初めて聞いた。

フィンランディアはうっとりするほど美しい旋律で、初春の幕開けにぴったりの選曲。今日は、そういうことで、黒一色ではなく、女性陣は、赤い色のコスチュームを着用されている団員がいらして、新春のムードを盛り上げていた。

弦も管も申し分のない響きだが、特にオーボエ、ホルン奏者のうまさが際立っていたように感じられた。フルートでは首席の方が持ち替えでピッコロを吹かれていたのが珍しいといえば珍しいのかも。さらに、コンバスにお一人だけ、今ではマイナーになった仏式の持ち方をされていた。

楽器の配列は左からヴァイオリン、1番、2番、ヴィオラ、右手前にチェロ、その後ろにコンバス。ホルンは右側。そういえば、フィンランディアでは長いバス・クラリネットが登場したのが目を引いた。

2番目の演目の「野ばと」だが、解説によれば、ドボルジャークにとっての同胞、チェコ人の詩人エルベンの詩集「詩の花束」の中からの一篇を元に作曲したということだが、これが実は凄惨な内容というから驚きである。タイトルとは程遠い内容に二度びっくりだ。

6番は私のようなドボルジャークファンには、やや物足りなさの残る曲で、多少その意味では期待はずれだった。これのどこがドボルジャーク?と言う感じで、淡々とあまり特色のないまま終演してしまった。

アンコール曲は同じドボルジャークの「スラブ舞曲第8番」

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いつもの左側バルコニー席へ。遅れて行ったから、最前列はすでに埋まっていた。

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山元マエストロ、久しぶりに拝見。失礼ながら、やはりすこしばかり年齢を重ねられた印象。いつものように大変物静かな振り方。オツカレサマでした!ヴィルトーゾフィル、ありがとう!弾きっぷりは実にヴィルトゥオーゾ(Virtuosoはイタリア語で巨匠とか名手の意味)でした。またお願いします。

#3

2018 Vocal Concert & オペランサンブル・ワークショップ 第3期修了発表会

180113 合唱指導をしてくれている吉田先生が立ち上げているオペラ愛好家向けのワークショップが、近くのホールで行われた。

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今回は10名がエントリーしての熱演が繰り広げら、楽しませてもらった。みなさん、もちろんこの世界は素人さんなのだが、半年かけて取り組んだ成果が見事に結実していたようで、どの顔も満足げ。中にはプロ顔負けのレベルに達している方も数人いらして、講師の先生方の苦労が報われたというところだろう。

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3部では助演の3名が加わり、一段と熱を帯びた演唱が展開された。助演のプロと一緒という安心感からか、独唱よりみなさん、のびのび演奏されていたのが、大変印象的だった。

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最後に全員で。演目は・・・忘れた。

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右端のお二人は指導講師の川越塔子近藤 圭。紹介するのは主催者兼ピアノ伴奏の吉田貴至先生。

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助演は男声で、向かって左からテノール秋山和哉、バスの高崎翔平、そしてバリトン堤 智洋。3人ともすぐにでも本公演の大舞台を踏めそうな実力ぶりを示した。

#2(文中敬称略)

「ネイビーシールズ ナチスの金塊を奪還せよ」

180112 仏独合作 RENEGADES(反逆者)105分 製作・脚本:リュック・ベッソン (59 仏)、監督:スティーヴン・クエイル(年齢不詳、米、「イントゥ・ザ・ストーム」)

邦題通り、ナチス第2次大戦末期にユーゴ(現ボスニア・ヘルツェゴビナ)の山間の村に大量の金塊を隠した事実がのちに判明、ネイビー・シールズ(米海軍特殊部隊)がそれを水中から引き上げる作戦を、敵の反撃に遭いながらもまんまと成功させたというお話。完全なるフィクション。

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ひんぱんに映画を見に行っているのに、なぜか本作の予告編は一度も見ることはなかった。それに事前情報もほとんど持たず見に行った作品は多くはない。多分、以前見た「ネイビー・シールズ」(ACT OF VALOR)(2012)の印象が強烈だったからかだろう。

その期待は裏切られなかったが、こっちの作品はツッコミどころ満載。出演者にはJ.K.シモンズシルヴィア・フック(オランダ女優、「ブレイドランナー2049」)以外、知らない連中ばかりで、おそらくかなり低予算でキャスティングができたようだ。

冒頭からスリリングかつエキサイティングな場面が続き、スクリーンに釘付け状態。見せ方は巧みだ。「そんなバカな!」的なツッコミはとりあえず置いておいて楽しんだ方がいい。

報道クルーという形で敵陣に乗り込みペトロビッチ大統領(多分、民族浄化の名の下に大量虐殺に手を染めた悪名高きミロシェヴィッチセルビア大統領をイメージか)を取材したいと言う冒頭シーン、パンツ一枚にされ、車内も隈なく調べられるが、どんだけマッチョなのというような、一見して特殊部隊と分かる体型なのに、見逃す?

作戦は一応成功して、元大統領の身柄を拘束するが、途中で敵とドンパチやらかし、敵軍の戦車まで乗っ取ってのド派手な戦闘をしたと言う理由で上官(J.K シモンズ)から大目玉を食う。

でも、ボロクソに、こてんぱんに怒鳴りつけた後に、ウィスキーのマグナム瓶を取り出し、「みんなで飲め、全部で5本あるぞ!」と照れ臭そうに言うところの、なんとも人間味溢れる上官を演じさせると、ちょっとこの人の右に出る者がいないような気もする。こういう上官、上司って、いるいる。J.K. シモンズは怒鳴りだしたら止まらないようなタイプが不思議に似合う役者だ。ドラマーを熱血指導する「セッション」を思い出す。

ナチスの一個小隊を壊滅させるため、パルチザンがダムを爆破して、ナチスや住民ごと村を水没させたこと、まして金塊がいまなお村の教会の壁のどこかに眠っているという事実などを知るものは生存しておらず、永遠に封印されてしまう筈だったのが・・・。

後半、特殊部隊が空から湖に飛び降り、水中で金塊を捜索、敵側の妨害に遭いながらも、特殊機材で金塊をヘリで吊り上げ見事奪還に成功するという、まああり得ない話ながら、たっぷり楽しめたから、評価はともあれ、自分の中では上位ランク作品。

#4 画像はIMDbから。

「ジャコメッティ 最後の肖像」

180111 英 90分 FINAL PORTRAIT(最後の肖像画)イタリア系米人の喜劇役者スタンリー・トゥッチの監督作品というから、驚く。尤も、過去数本、自分で撮った作品あり。「シェフとギャルソン、リストランテの夜」(1996)など、自分も出演しての監督作品だが、本作は自らが出演していない初の監督作品。

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昨秋、国立新美術館で「ジャコメッティ 展」を見たばかりという絶妙のタイミングでの本作公開!それにしても、ジェフリー・ラッシュの役作りが余りにも見事で、画面に引きずり込まれる。昨年見た「ロダン カミーユと永遠のアトリエ」でロダンを演じたヴァンサン・ランドンもなりきっていたが、本作のラッシュは写真や動画で見るジャコメッティ、そのものという感じだ。

ジャコメッティはイタリア国境近くのスイスの寒村出身、父親も絵を描く環境で育ったから、彼も、二人の弟も絵を描いていたが、成功したのはアルベルトのみ。すぐ下の弟であるディエゴはよくアルベルトのモデルにもなっていたが、後年は助手のようなことをしていたようで、本作にも登場している。

そんなわけで母国語はイタリア語だが、そこはスイス人、しかもパリで制作活動をしていたから、仏語は母国語同様だし、英語も堪能だったらしい。

ほんの数日でいいからと言われ、モデル役を引き受けた作家で美術評論家のアメリカ人ジェームス・ロードは、ニューヨークに一刻も早く発つ予定だったが、ジャコメッティに対する好奇心には抗えず、多少モデル役を延ばされても構わないと、彼のアトリエへ。

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すると、せっかく現れた友人を尻目に制作中の仕事をやり始め、ロードも戸惑いを隠せない。それでもやっと所定の位置に座らされ、キャンバスを据えて、描き始める段になると、「随分凶悪なツラしてんなぁ」とか「いや、待て変質者の顔だ」とか、散々人の顔をくさすではないか。苦笑するしかないロード。しかし、本当のジャコメッティの凄さを知るのは、まだ先の話。

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ちょっと描き始めると、「おお、XXック」叫ぶや、筆を放り出すという始末。これを延々繰り返し、気づけば、すでに19日も経過!なんどフライトをキャンセルしたことか。描いては消し、描いては消しの繰り返しに、恐怖すら覚えたロードは、意を決して、自分の覚悟を弟のディエゴに告げるのだった。

この作品、パリでロケしたとばっかり思っていたら、エンドロールで実はロンドンで撮影したと出て、びっくりだ。パリでのロケに金がかかると考えたトゥッチは、ロンドンで撮影して、CGでパリに作り変えたそうだ。今ではこういうことが普通に行われるからすごい世界だ。ロードとジャコメッティが何度か散歩するシーンはてっきりモンパルナスかモンマルトルの墓地だとばかり思ったが、まんまと騙されていたと知った。

日本の哲学者で評論家の矢内原伊作と仲が良かったし、伊作自身もジャコメッティのモデルをしているが、本作でもほんの一瞬だが伊作が登場する。なにかジャコメッティの女房といい仲であるかのような映像は気になる。

それにしても、ジャコメッティの性格描写まで含めて、たったこれだけの挿話を映像作品にした手腕、なかなかのものと感服。

ロード役のアーミー・ハマーは、なんだかなぁ・・・。好みの問題だろうが、端正過ぎて、リアリティーに欠ける。こんな顔を見て、誰が凶悪とか変質者とか言うかね。

見終わった後のホッコリ感は久しぶり。

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#3 画像はIMDbおよびALLCINEMA on lineから

 

「キングスマン:ゴールデン・サークル」

180109 英 140分 原題:KINGSMAN:THE GOLDEN CIRCLE 製作・脚本・監督:マシュー・ヴォーン(46, 英国)

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冒頭のBGM、アレッと思ったら、ジョン・デンヴァーの歌うカントリーロードの旋律が流れ、これが全体の伏線になっていて、純粋な英国映画でこの出だしは珍しい。(昨年秋にみた「ローガン・ラッキー」でも、チャニング・テイタムが出演し、この歌が重要な場面で使われていたっけ。これはまあ、偶然だろう。)

いずれの国にも属さない独立系諜報機関キングスマンがポピー(ジュリアン・ムーア)率いる国際麻薬組織ゴールデンサークルにより壊滅状態に。生き残ったエグジー(タロン・エガートン)とコンピューター担当のマーリン(マーク・ストロング)は、ケンタッキーをベースにする同盟組織であるステーツマンに協力を求め、ゴールデンサークルに対抗する秘策を練る。

140分と結構長いが冒頭のスリリングなカーチェイスを含め随所に見せ場を用意していて飽きさせない工夫は一応しているが、ごった煮感は拭えない。ただ、暮れに見た「否定と肯定」同様、英米が入り乱れているところに結構興味を持った。

舞台がケンタッキー州とロンドンで、演じる俳優もほぼ英米同数のビッグネームが並ぶから、そこは凄い。端役でエミリー・ワトソンを使うほどの贅沢さだ。

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有名テイラーがずらっと並ぶサヴィル・ロウにある紳士服屋の地下がキングスマンの本部。

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ロンドンの街並みを疾走するカーチェイスでの猛烈な取っ組み合いは見せ場の一つ。

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エルトン・ジョンが出ていて、散々笑わせる。これらのシーンは本作のエンタメ性に一定の効果あり。

スイスの雪山でロープウェイを使って追いつ追われつのシーンは007のシリーズを思わせる。監督は、007へのオマージュのつもりでイメージした可能性あり。

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登場人物の多さを物語る写真。

ウィスキーがやたらに登場して、ウィスキーの宣伝かよと思わせる。しかもスコッチのWhiskyに対して、ケンタッキー・バーボンのWhiskeyという図式も面白い。

PG12指定と前作より厳しくしたのは、結構えぐいシーン(人間をミンチにして、その肉でハンバーガーを作るなど、悪趣味も甚だしい。「羊たちの沈黙」シリーズを彷彿とさせる。)や、子供に見せたくない際どいシーンがあるからだろう。

#2 画像はIMDbから。