ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「歌唄い」@アプリコ小ホール

180108 地元合唱団のピアノ伴奏および歌唱指導もしてくれている吉田貴至先生の企画する音楽会へ。180席はすべて埋め尽くされていて、しかも9割は女性。それほどの人気ぶりは好企画であることに尽きるが、出演者が全員イケメンばかりということに負うところが大きい。

冒頭の挨拶でも触れられていたが、テノール1、バリトン3というのはこの種のコンサートとしては確かにバランスが悪く、選曲が難しいところだ。しかし、名手吉田の手にかかると、そのアンバラスさを逆手にとって構成しちゃうからすごい。

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⬆︎左側3人は常連で、過去なんども聴く機会があったが、小林啓倫を聞くのは初めてである。バリトンでも三者三様、声質に微妙な差があるところが、聴いていて実に面白かった。

大沼の声は柔らかく、往年のディートリッヒ・フィッシャーディースカウを彷彿とさせる。加耒の声は細身の身体からこんな声が出て来るのかと思うほど、深みのあるふくよかな声。対して、小林のはくっきりとした声質で、聴きながら、昔どこかで聴いた外国人バリトンの声に似ているなぁと思いつつとうとう思い出せない。

一人でテノールを背負う形になった新進気鋭の金山は、伸び盛りで、昨年末も五島育英財団海外派遣研修生最終選考会で聞いたばかりだが、外連味のない歌いっぷりで、人気急上昇中。終演後も彼に群がるおばちゃんたちの長い行列が出来ていて、声をかけられたのは、30分も過ぎた頃だった。

演目:

全員 オペラ「椿姫」から”乾杯の歌”  G.Verdi

大沼 ”音楽に寄す”  F. Schubert

金山 ”たぐいなく優美な面影”(Vaghissima Sembianza)  S. Donaudy

小林 オペラ「フィガロの結婚から」”もう飛ぶまいぞこの蝶々” W.A. Mozart

加耒 オペラ「アレコ」から”月は高く輝く”  S. Rachmaninov

全員 オペレッタ「こうもり」から”夜会に行こう” J. Schtrauss

ーーーーーーーーーーーーー休憩ーーーーーーーーーーーーー

全員 荒城の月 滝廉太郎

加耒 初恋 越谷達之助

小林 木兎 中田喜直

大沼 カロヴァ 山田耕筰

金山 ◯と△の歌 武満徹

大沼・加耒 オペラ「ドン・ジョヴァンニ」から”シャンパンの歌” W.A Mozart

金山・小林 オペラ「愛の妙薬」から”言いたかったのは愛の妙薬のことです”

                             G.Donizetti

全員 オペラ「セヴィリアの理髪師」から”私は町の何でも屋”    G. Rossini

アンコールは「こうもり」第2幕から”われら手をとり”("Bruderlein und Schwesterlein")と「メリー・ウィドウ」から「女、女、女!」。

合間合間の4人のトークが絶妙。一番若い金山がいじられ役。加耒は正統派の進行ぶりで、いわゆる優等生タイプ。これに大沼がさんざんツッコミを入れるというパターン。いつもながら随分笑わせてもらった。

肝心の歌唱では、各自、自分の持ち味をたっぷり示したと思うが、とりわけ最後の演目、「私は町の何でも屋」をテノールまで入れて、4人で歌いまくった技巧には完全に脱帽!

終演後、撮影大会となり、出演者とのツーショットを熱望する合唱仲間の女子たちのため、ひたすらシャッターを押しつづけた。自分が映った写真は一枚もなし。

#1  文中敬称略

初春を第九で祝う

1801016 団員の声がけだけで立ち上げたという、珍しい形で立ち上げた新進のオーケストラ、その名もオルケストル・デ・ベル(Orchestre des Belles)!そう、あの「美女と野獣」の美女がBelleであるから、美女管とでも呼べば面白いのだが、略称はベルオケらしい。新年早々、その記念すべき第1回のコンサートの舞台に乗れたのは嬉しい限り。

とは言え、合唱団員募集を偶然知って主催者に電話した昨年10月中旬時点では、バスパートはまだゼロ人と判明!それでも会場がしばしば聴きに言っているミューザ川崎であることと、ソリスト4人中3人の方々を以前から存じ上げているという理由で、申し込むことに。

いずれ増えるものと思って、初回の合唱練習に臨んだら、バスは自分一人だけという状況で、さすがにやや不安を感じたのは事実。その後、回を重ねる(と言ってもオケ合わせを含めて全部で7回というのは、かなり異例で、初心者には相当ハードだった筈)ごとに、数人ずつ増えていき、一安心。

さらに、最終段階で二つの合唱団から大量参加があり、エキストラ参加の芸大生も加え、最終的に145人ぐらいまでに膨れ上がるという展開にはびっくりだ。

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オケの方も寄せ集めだけに、最初の頃は素人の耳にもわかるほど音が不揃いで、これまた不安材料だった(えらそうな物言い、お許しあれ)が、蓋を開けてみれば、見事な演奏ぶりで、終演するやいなや、2階席最前列あたりから大きなブラーヴォ!!が飛んで、思わず笑みがこぼれる。

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水戸マエストロはまだ20代という新進気鋭ぶり。打ち上げで話をきいたが、尊敬する指揮者はクラディオ・アッバード(1933-2014)だそうで、周囲演奏家を巻き込んで鼓舞し続けるスタイルに共感したとおっしゃる。われわれ素人に対しても、とても丁寧でわかりやすい指導ぶりには好感がもてた。

合唱指導の演奏先生にも、大変優しく接していただき丁寧な指導を受けたことに感謝したい。個人的には自分の母校(中・高)で、30年も教鞭を取られていたことを偶然知って、一層親しみが湧いた次第。今回は、最後の最後まで熱心な指導がつづき、とりわけドイツ語の発音にこだわって、口語体の発音を強調されていた。舞台からお姿が近くに見えていたのは心強かった。

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ソリスト陣がまた大変豪華なメンバーで、しかもご覧のとおりの美男美女ぶり!こんな布陣で一緒に歌える幸せを噛み締めながら、またマエストロが笑顔を絶やすことなく振ってくださるので、こちらもいつの間にか笑顔になっており、今回7回目の第九だが、これは初めてのことだった。

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本番前、ゲネプロステマネがソリストの位置を確認中。自分の位置はコンバス6番の真後ろで、ちょうど首の先端部分の渦巻きが目の前30cmぐらいに来るようなかっこうとなり、こんなに視界が制限されて歌うのは正直苦痛だった。会場に来ていた歌仲間や家族からも、顔がほとんど見えなかったと。2本の”首”の隙間からマエストロをかろうじて捉えながら歌う羽目となったが、これもいい経験。

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午後7時、いよいよ出陣。ソプラノ団員の声援を受けながら一足先に舞台裏へ。

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昨年秋、地元合唱団の定期演奏会で出演したアプリコ大ホールに比べて、やはりこうしたスペースが贅沢に取ってあるのは羨ましい。

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調理まで出来そうな設備も。

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終演後の打ち上げで、マエストロからご挨拶とオケ、合唱団への労いの言葉をいただいた。

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ソリストたちからも一人ずつご挨拶が。みなさん、さすがに慣れてらっしゃる。

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ソプラノ、鷲尾麻衣さんと、メゾソプラノ鳥木弥生さん。豪華なツーショット!

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左はテノール城 宏憲さん、そして向かって右側の美女たちは主催者(代表・インスペクターおよびコンサートマネジャー)。

#1

 

「鉄道絵画発→ピカソ行 コレクションのドア、開きます」展@東京ステーションギャラリー

1801014 この企画展の詳細はこちら➡︎「コレクションのドア、開きます」

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「驀進」中村岳陵 D51の運転席で汗みどろで働く運転士。奥に見えるメカの細密な描写も素晴らしい。

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特殊効果でミニチュア風な効果を上げている写真。本城直季はカメラの「あおり」手法でこうした都市や自然を俯瞰で撮り続けている。Small planet Tokyo Station 2004

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こちらは最新版東京駅の俯瞰写真。Small Planet New Tokyo Station

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木村荘八《坂の中腹》1918年

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特徴あるこの作品は遠藤彰子の「駅」

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「自画像としての私(メドゥーサ)」森村泰昌 古今の名画の中に自分の顔を落とし込む作風は、実に面白い。

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平日の昼下がり、人影まばら

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最後の部屋にピカソが4点も並んでいたが、この美術館所蔵とは知らなかった。

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昔の遺跡かと思わせる壁面。独特の風合いが素晴らしい。その意味でも大変ユニークな美術館であり、駅中にあるという優れた立地も手伝って、好きな美術館の一つ。

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5時過ぎ、すこしだけ日没が遅くなった感じがする。

「ダンシング・ベートーベン」

180104 DANCING BEETHOVEN スイス/スペイン83分

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ベートーベンの第九交響曲をバレエで表現するという、伝説の振付師モーリス・ベジャール(2007没)の斬新な試みが2014年に東京で再現されたが、本番までのバレエ、オケがそれぞれ悪戦苦闘しながら、実現に至る過程を克明に記録したドキュメンタリー。

冬、ローザンヌ、春、東京、夏、ローザンヌ、秋、本番東京(東京文化会館)と4つに分けて、全体の3/4をバレエ、残りをオケの練習(イスラエル・フィル、ズービン・メータ指揮)に割り振って構成。全体の統括を振付師のジル・ロマンが、そしてインタビューを娘のマリヤ・ロマンが担当して、解説を加えて行く手法。

ジル・ロマンの絶大な信用を得て抜擢されたウクライナ出身のダンサーが、妊娠で降板したり、ダンサーの中に、稽古中に脚の筋肉断裂で本番に間に合わず、泣き出すものが出たり、その他大勢組の中に大事な練習に出られないと告げるや、その場で首を宣告されたりと、裏事情、結構大変なのだ。

第九のシラーの詩にある”人類はみな兄弟”の精神に則り、それを表現したいというのがベジャールの当初から一貫した精神であり、それをしっかりロマンが受け継いでの東京公演の舞台となって結実したわけで、本番の舞台ももう少し見せてくれてもよかったと、その点だけが残念!でも、まあよくできたドキュメンタリーであるには違いない。

オペラはよく見に行くのに、バレエはさほどでもなかったのだが、最近、すこしずつ興味を持ち始めている。本作の稽古風景では、みな鍛え上げた体幹がまったくぶれずに踊る姿には圧倒される。

それにしても、アジア人には申し訳ないが、白人、黒人たちの脚の長さ、お尻の引き締まり具合、まっすぐ上に上がる脚線のきれいなことは、ため息が出るほど美しい。ネアンデルタールだかクロマニヨンだか知らないが、祖先から受け継いだに過ぎない体型は羨ましい。ピテカントロプス・エレクタスや、シナントロプス・ペキネンシスでは、どうも分が悪い。

監督のアランチャ・アギーレ(Arantxa Aguirre)はマドリッド出身の53歳の女性。因みに、Arantxaという名前からすると元々はバスク人だろう。

#1 画像はIMDbから。

 

謹賀新年!

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年末にはミサイルがなどというブッソーな噂もあったが、今年も無事年が明けた。さて、平成30年(2018)はどんな年になるんだろう。

ウィーンから生中継されているウィーン・フィルの恒例のニューイヤーコンサートを聴きながら、見ながら書いているが、いつ観てもこの催しは華麗そのものだ。

聴衆に日本人らしき姿が年々増えているのが目につく。それも、かなりいい席で。羨ましいが、ぬくぬくとテレビ鑑賞も悪くない。

演奏側を見ると、日本のオケと違って、やはり女性が数えるほど。ヴァイオリンに3人、フルートに一人、そしてハープ。これはベルリンフィル同様、伝統と格式にのっとってのことなのか。

番組冒頭に紹介されたヘーデンボルク三兄弟の長男、和樹(40)もヴァイオリンで参加している。

今年のマエストロはリッカルド・ムーティ(76)、かなり太り気味だが、格調高いこと。

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