121005 TOHOシネマズ・シャンテ IN DARKNESS ポ・独合作 143分 [監]アグニェシュカ・ホランド
実話に基づいた(最近、多い!)長編ヒューマン・ドラマ。これを見ると1956年度、同じポーランドの「地下水道」(アンジェイ・ワイダ監督)を思わずにいられない。その時は悲劇的なラスト、本作はハッピーエンド。
消えかかりそうな、ほのかで頼りなげな懐中電灯の灯り、鼻の粘膜にまとわりつく強烈な悪臭、ねずみが我が物顔で這い回る、そんな下水道の一隅で、息を潜めることだけが生への唯一残された方法。
そんな絶望的な環境で実に14ヶ月もの長きに亘って持ちこたえ、ついに明るい日の光が差す地上へ生還を果たす3組のユダヤ人家族の話だ。
しかし、この映画の主人公はタイトルのソハである。レオポルド・ソハはポーランド人の地下水道管理人だ。いつものように下水道をチェックしていると、ゲットーの住まいの床を掘り下げて、地下水道に達したユダヤ人家族と遭遇する。
即座に腕時計と金を要求するソハ。その代わり占領している独軍には黙っていてやると。初めは、計算高くユダヤ人家族を商売道具ぐらいにしか考えない、狡猾そのもののソハ。金品と引き換えに、食物や日常品の差し入れを繰り返すうちに、彼の心に微妙な変化が・・・。
こんな過酷な環境下でも、生と性の営みがあるのだ。それに幼児も含まれており、日々、暗闇の中で息を呑むドラマが展開される。
ある日、豪雨がこの一帯を襲う。丁度娘の初聖体拝領式で教会に参列していたソハ、彼らユダヤ人家族が気がかりで、とうとう式を中座して、礼服のままマンホールの蓋を開け、彼らの救出に向かうのだったが・・・。
⬆とうとうその日が!
ユダヤ人家族がナチから逃れようと身を隠すと言えば、真っ先にアンネ一家の話を思うが、最後は絶滅収容所へ送られるものの、少なくとも太陽が差し込む部屋があり、空気も普通に吸えた違いは大きい。
本作の話は、最後にソ連軍が侵攻してきて、ついにこれらの家族も解放されるわけだが、14ヶ月の長きにわたり過ごさざるを得なかった劣悪極まりない環境を思えば、どちらがより不運だったろうか。
前編セット撮影だったと思うが、雰囲気がよく出ていて、見ていても息苦しいほどだった。
#68 画像はALLCINEMA on lineから