ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「最愛の大地」

130820 原題:IN THE LAND OF BLOOD AND HONEY(血と蜜の大地で)これはLAND OF MILK AND HONEY、そう旧約聖書に出て来る、神がアブラハムの子孫に与えると約束したカナンの大地のもじりだろう。この辺りに、アンジーの強烈な宗教意識が感じられる。

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原作、脚本、製作、監督までこなすだけの才能がこの女優にあったということに、先ずは驚く。ブラピとの間に出来た子供の他に、養子も加えて6人の子供の養育、また最近では、遺伝子解析からかなりの確率で乳癌を発症すると知り、事前に乳房切除に踏み切り、世間を驚かせたりと、固い信念に基づく積極且つ大胆な行動で知られており、今回はまた初監督作品で世間をアッと言わせた。

 

これまで女優としての役柄は「チェンジリング」のようなのは寧ろ例外で、肉体的にも男と張り合うアマゾネス風の役柄が圧倒的で、やはり男性的な部分はかなりあると思える。

 

ところで、この作品、これまで小説、TVドラマ、映画作品で散々取り上げられてきているから、筋書きは少々陳腐だと思うが、これを常日頃、社会問題、国際情勢に並々ならぬ関心がある女優が作ったことに興味を持った。

 

随所に、素人っぽさや、やはり女性監督の限界かな、と感じるところもなくはないが、逆に女性らしい気遣いが感じられて、それはそれでなかなかよいとも。レイプ・シーン、セックス・シーン、戦闘シーンなどは、かなり抑制を利かせて撮影されている。

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ボスニア・ヘルツェゴビナに住むムスリムの画家アイラと、セルビア人の軍人ダニエル、1992年を境に、敵味方に引き裂かれてしまう運命が待っていようとは。それでもダニエル指揮下の中隊に、捉えられたからまだよかったのだ。だが、ダニエルの父親はバリバリの民族派の将軍、幼児期にムスリムの襲撃を受け家族を皆殺しにされた過去を持つだけでに、ムスリムに対する恨み、憎しみはハンパではない。

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その息子が、憎むべき敵の女とねんごろになっていると、部下が耳打ちしたから、さぁ大変。ま、なるようにしかならない。結局、彼女が重大情報を漏らしたために、自軍が大被害を受けたと勘違いしたダニエルに・・・・。

 

初監督作品にしては上出来なのだが、残念だったのは、せっかく現地人俳優を起用しておきながら、何と全編英語である!!!そりゃ古今の名作を映画化する場合、製作国の言語で作る場合は、過去いくらでもあるが、この種の作品は、現地語でやるかやらないか、その差は大きいと感じるのだが、どうだろう。

 

#65 画像はALLCINEMA on lineから拝借しました。