220522 NOMADLAND 2020 米 1時間47分 監督・脚本・編集:クロエ・ジャオ
2008年のリーマンショックの煽りを受け、一切合財失った60代の女性ファーン、亡き夫との思い出のキャンピング・カーでノマド(”遊牧民”)として逞しく生きる姿をヴィヴィッドに描きます。共演にはこれまた演技派のデイヴィッド・ストラザーン。
主人公ファーンを演じるフランシス・マクドーマンドは実に3度もアカデミー主演女優賞を取り、さらに本作では製作(共)としても受賞という快挙達成で、いかに優れたプレイヤーかが分かります。
また監督の中国出身のクロエ・ジャオは監督賞、作品賞、編集賞、脚本賞と4部門でオスカーを獲得するという離れ技を達成。出身国ももちろん喜んだんでしょうが、彼女は現体制には反対しているので、中国での本作公開はありません。こういうところが一党独裁の弊害が色濃くでますねぇ。
本作では実際のノマッドが実名で多数登場、マクドーマンドの演技があまりにも巧みゆえに、彼らにはまったく違和感がなく、中には最後まで彼女が自分達の仲間の一人と信じて疑わず、ハリウッドの女優であることを知らなかった人までいたということですから。
こういう役を演じきれるハリウッド女優はまあいないんでしょうねぇ。よくぞジャオ監督もキャスティングしたものです。間違いなく秀作です。
ところで、リーマンショックで実際に一つの町が消えました。この映画の舞台である、ネヴァダ州の砂漠にあったエンパイアという町です。ここはUSGと略称されるUS GYPSUM(石膏、ギプス)の採掘工場の、まあいわば企業城下町として存在していたので、工場撤退で、住人も消えたわけです。会社が提供していた社宅には2011年までの使用許可が出ていたようですが、結局ゴーストタウンに。ただ、現在は別の企業が進出して復活しているようですが、人口はまだ100人程度とか。なんとはなしに、「幸せの黄色いリボン」を思い出していました。