ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「スリー・ビルボード」

180209 THREE BILLBOARDS OUTSIDE EBBING, MISSOURI 米・英 116分 製作・脚本・監督:マーティン・マクドナー

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自分の娘をレイプされた上、焼き殺され、しかも最後に娘に浴びせた心ない自分の言葉を絶対に許せない母親、ミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)は、事件後半年経過してもなお事件解決の糸口さえ見出せない地元警察に対する抑えがたい怒りを、誰も考えつかない方法でぶちまける。

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しかし、怒りの矛先となった地元警察の署長、ウィロビー(ウディ・ハレルソン)は、実は極めて真面目に対応しようと、彼女を自宅に訪ね、自分としては精一杯やっているつもりだが現時点で手がかりがないことを率直に詫びる。しかも、自分は膵臓癌で余命が限られているとも告げるのだった。⬇︎

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部下の巡査、ディクソンは署長とは対照的な対応で、徹底的にミルドレッドを敵視する。しかも、夜中に署長がディクソンに遺してくれた手紙を読むために忍び込んだところへ、ミルドレッドが火炎瓶で建物に放火、辛くも脱出するも顔に火傷を負う。そんな二人が犯人かも知れない男が住むというアイダホへ向かうラストがなかなかいい。

この作品、フランシス・マクドーマンドのために作られたような作品で、彼女以外に、適役はいないと思った。それほど、しっくりはまった役どころである。こういう女優はハリウッド広しと言え、滅多にいない。

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男かと見まごうばかりの不敵な面構えは、まず他に見当たらない。しかし、この役、出演するかさんざん迷ったらしい。確かに好演する自信はあったのだろうが、あまりにこのイメージが強いと、今後の出演作品の選定に影響を与えかねないと思ったのか。亭主のジョエル・コーエン(製作者、脚本家、監督)に相談すると、「ガタガタ言ってないでとっとと引き受けちまえよ!」と一喝されたとか。まことに正しい判断だった。

なお、このミズーリ州にあるとされるEbbingという町は存在しない。撮影はノース・カロライナのシルヴァという村で行われた。

#9 画像はIMDbから