ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「6才のボクが、大人になるまで」

141116 原題:BOYHOOD 165分 米 原案・製作・脚本・監督:リチャード・リンクレーター (BEFORE SUNRISE, BEFORE SUNSET, BEFORE MIDNIGHT三部作)出演:パトリシア・アークエットロザンナ・アークットは姉)、イーサン・ホーク

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こんな映画、見たことない。とてつもない作品だ!3時間近いけど、まったく長さを意識しないで見ていた。しかも、家族の日常を淡々と描くだけで、どちらかと言えば平板な作品なのに。

それは、12年間に亘って、同じチームで撮影したという、かなり実験的な手法が成功しているからに他ならない。そりゃ6歳のかわいらしい男の子が、ラストシーンでは18歳という堂々たる大人だからね。ドキュメンタリーではなく、劇映画にしているところに、この作品の凄みがあると言える。

テキサス州の地方都市が舞台。6歳のボク、メイソンは姉、サマンサ(ローレライ・リンクレーター、監督の娘)と母、オリヴィア(パトリシア・アークエット)との3人暮らし。時折、オリヴィアの離婚した父メイソン・シニア(イーサン・ホーク)と過ごすのを楽しみにしている、ごくありふれた親子の生活。

映画は、オリヴィアの再婚、再婚相手が手のつけられない暴君で、しかもアル中であることから、再び3人暮らしに、更に、オリヴィアは再々婚、メイソン・シニアも再婚、姉弟は、そんな親たちの気ままな(実際には必死なのだが)生活ぶりにもめげず、転校したり、ヤバい友達が出来たり、恋をしたりしながら、結構素直に順調に成長していく姿を瑞々しく映し出して行く。

そして、ボクもめでたく高校を卒業、大学生に。家を出ようと荷造りをしているメイソンに、オリヴィアが「もっと長いと思ったのにー!」と、巣立っていってしまう一人息子を手放す寂しさを爆発させるシーンが印象的だ。

大学初日、寮に到着すると相部屋相手が、待ちかねたように、メイソンをハイキングに誘う。ガールフレンド、バーブとその友達ニコルも一緒だ。平原に沈みゆく太陽に照らされた髭面の顔には、もうあどけなさは見られない。ニコルがつぶやく。「Seize the moment(一瞬を掴み取れ)って言うのは、違うわよね。本当はThe moment seizes us(一瞬が私たちを掴み取れ)なんじゃない。」味なセリフを言わせてジ・エンドとなる。BEFORE MIDNIGHTのエンディングとそっくり。

やはり最も感心したのは、物語がシームレスに進行していくのだが、子供達がどこかの時点で急に成長するのではなく、見ている側が気づかないうちに少しずつ成長していっているように作られている点だ。それと、BEFOREシリーズでも感じたが、結構長いセリフをアドリブかなと思わせるほど自然に役者たちに語らせているところかな。とにかく、素晴らしい!

父親が、ある時二人に向かって、性教育を語るシーンがあるが、恥ずかしがる二人の表情、動きがたまらなくいいのだが、これもイーサン・ホークのアドリブじゃないかと思ってしまう。

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⬆️これが、⬇️だものねぇ。完全にオッサン。

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#91 画像はALLCINEMA on lineから