ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ルーム」

160502 原作・脚本:エマ・ドナヒュー、監督:レニー・アブラハムソン (原作者が脚本を手掛けるというのは、かなり稀有なことだろう)

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主演のブリー・ラーソンが今年のアカデミー主演女優賞を取ったほか、様々の映画祭で、受賞、もしくはノミネートされた話題作。

もう少し監禁中の場面が多いのかと思ったが、それは前半だけであり、さらに重要な見せ場はしっかり後半に用意されていた。

そりゃまあ、そうだわな。7年間も狭い一室(納屋を改造)に閉じ込められていたわけだから、解放されて、ハイ、めでたしとはならない。PTSDに苦しんだ母親ジョイ(ラーソン)は、自殺未遂まで。

彼女がそこまで追い詰められることになった、犯人との間にできた息子ジャック(この子役がすごく女の子っぽいので、ずーっと女の子だと思い込んでいたほど)をめぐる周囲、とりわけ家族の対応に極端なまでに神経を尖らせていく過程が、本作の一番の見どころではないか。

ジャックのたっての願いで、何ヶ月か後に”ルーム”を訪れる母子、様々な感慨が去来しながらも、ジャックは「さよなら、バスタブ、さよなら、洗面台!」と次々に声をかけ、途方もなくおぞましい過去と決別し、雪のちらつく中、去っていく姿に、思わず涙しそうになる。(撮影はトロントで行なわれ、ラストシーンに雪が欲しいということで、プロダクション・デザイナーが、人口雪を降らす案も考えたらしいが、予算の関係で断念していたら、なんと撮影当日に雪が降り出したとか)

それにしても、屈託のないこの子役のうまさには、さすがのアカデミー主演女優賞獲得者ですら、影が薄くなりそう。

ブリー・ラーソン(名前からして北欧系)だが、キャリアを見ると、ほとんど日本での公開作品がない。本作では、ほとんどをすっぴんで通した(感じを出すために撮影中、まったく洗顔なしで通したとか)せいもあるだろうが、悪いけど、あまりインパクトが感じられるタイプの女優ではない。本作でいきなり主演賞を取ったから、これから人気が出るかも知れないね。

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⬆︎ジャックには、この天窓が世界のすべてだった。(ちなみにこの長い髪はカツラ)脱出に成功し、犯人が運転する車の荷台で、初めて目にする本物の青空を信じられない思いで、まじまじと見続ける場面が、なんとも感動的だ。

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決行前夜、敷物にジャックをくるむ練習を繰り返し、ジャックに因果を含めるジョイ。

#35 画像は本作のオフィシャルサイト、およびALLCINEMA on lineから