160614 原題も:EX MACHINA (英語ではGod from the machine。古代ギリシャ劇の終幕で、上方から機械仕掛けで舞台に降り、紛糾した事態を収拾する神の役割。作為的な大団円のこと)108分 イギリス映画 脚本・監督:アレックス・ガーランド(監督としては第1作)
数年前に公開された、ホアキン・フェニックスがAIの声に魅せられ、ついには恋してしまうという、ちょっぴり哀愁漂うも、楽しいSF作品、「her/世界で一つの彼女」があったが、本作にも感情豊かなAIが登場し、人間と感覚の受け渡しをするが、ずーっと筋が立て込んでいて、しかも結末は予測不能。
大手検索エンジン会社のプログラマー、ケイレブ(ドーナル・グリーソン)は、社内審査の結果、山中に隠遁生活を送るカリスマ社長ネイサン(オスカー・アイザック)の広大な住まい兼研究所に招かれ、1週間滞在するという破格のご褒美に欣喜雀躍。
しかし、実際に現地へ行くと、自分の予想とかけ離れた状況に戸惑うケイレブ。実は、カリスマ社長がここで密かに開発している人型ロボットの性能評価を託される。そこで対面することになるロボット、エヴァ(アリシア・ヴィカンダー)と、当初はぎこちないながらも、次第に信頼関係を築いていく。
顔と手先、足先だけ人工皮膚で覆われているが、それ以外は、金属の骨格が透けて見える、すこぶるスタイリッシュなAI、エヴァはほぼ人間並みの知能と感情を備えている。ある日、彼女からネイサンに関する驚くべき情報を聞き出すケイレブ、持てるプログラマーとしての知識を総動員して、ある作戦を考えつき、エヴァの協力を得て、早速実行に移るのだったが・・・。実はネイサンが巧妙に仕掛けた罠にまんまとはまったケイレブ。ところが、その上を行く存在が。まさかの結末に息を呑む。
脚本が冴えていて、展開にほとんど無理がない。また、シュールな画面構成、カメラワーク、そしてやや耳障りとも言える音楽(音響)がうまく結実して、見事な作品に仕上げっている。
ネイサンが試作した人型ロボット(すべて女性)が何体もあることがわかってきて、その中にKYOKOと呼ばれる日本人が登場する。演じているのは日系イギリス人のSONOYA MIZUNO。顔は日本人、ボディーはイギリス人という感じで、もちろん英語のほうがネイティブなのだが、映画の中では、英語がわからないことになっている設定。終盤、このKYOKOは、極めて重要な役割を果たすことになる。この辺も興味深い。
「リリーのすべて」でアカデミー助演女優賞を取った、スェーデン女優、アリシア・ヴィカンダーは、この特殊なファイバーを身にまとって登場。異様な格好だからこその難しい演技を強いられたと思う。
アイルランド出身のドーナル・グリーソン(左)は、髭を伸ばせば50代ぐらいまでは演じられるが、髭なしだと、せいぜい30代。それほど、容貌が変化する。これが「アンナ・カレーニナ」、「不屈の男 アンブロークン」、「レヴェナント 蘇りしもの」に登場した同じ俳優とはなかなか思えない。
グァテマラ人のオスカー・アイザックも同様で、今回はスキンヘッドにこの髭で登場するから、しばらく誰だったか識別不能。「インサイド・ルーウィン・デイビス 名もなき男の歌」では、路上歌手を見事に演じていた。
#49 画像はIMdb, ALLCINEMA on lineから。