ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ヒトラーを欺いた黄色い星」

180807 DIE UNSICHTBAREN(見えざる者たち)独 111分 監督:クラウス・レーフレ

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スタッフ・キャスト陣に名前を知っている人物、皆無。ドイツでどの程度評価された作品なのか不明。

600万人もがナチスによって殺されたとされるユダヤ人だが、1943年6月、宣伝相ゲッベルスによりベルリンからユダヤ人一掃作戦に抵抗を続け、隠れ逃れたユダヤ人が7,000人もいたという事実は、衝撃的!

ただ、戦後生き延びられたのはその2割の1,500人に過ぎない。ユダヤ人の中にも、それなりの知恵と大いなる勇気、強い才覚を持ち、なおかつ運にも恵まれた人たちだけがやっとたどり着けた運命だ。

同時に、発覚すれば命がないことを承知で、こうしたユダヤ人たちを自宅などに匿った勇気あるドイツ人が多数いた事実も感動的だ。

隠れ家で、日中物音を立てずにひっそりと過ごすシーンは、「アンネの日記」の一場面を想起させる。

映画は、四人の生存者のモノローグを中心に組み立てられている。要所要所に実写フィルムをはさみ、再現ドラマ風に展開される。激しい銃撃や派手なアクションもなし。特別なヒーローも存在せず、普通の人々がドキュメンタリー・タッチで描かれるのみ。

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⬆︎街を歩いていると、ナチスの私服監視員から黄色い星の縫い付け方にイチャモンをつけられる。ちなみに彼の父親はドイツ人で、母親はユダヤ人だが、ドイツ人の配偶者ということで、ユダヤ人狩りの対象外。唯一、息子だけがユダヤ人として追われる身。これも随分気の毒な話だ。

1945年4月に入ると、いよいよ赤軍がベルリン市内への侵攻を開始。勢いづく隠れユダヤ人たち。防空壕から出てきた二人のユダヤ人青年、たちまち赤軍兵士に囲まれ、ドイツ人と疑われて撃たれそうになる。必死にユダヤ人と言い張ると、銃口を向けたままユダヤ教祈りの言葉を唱えてみろと言われ、手を挙げたまま、祈りの言葉を口にすると、表情を一変、銃を下げ、二人を固く抱擁する兵士。彼もユダヤ系ロシア人というわけで、これがなかなか感動的な終幕部の1シーン。

おそらくかなり低予算で作られたはずだが、うまく作ってある。画面にみなぎる並外れた緊迫感で、見終わって、少々お疲れ気味。

#58 画像はIMDbから。