ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ウォーキング・ウィズ・エネミー〜ナチスになりすました男」

210417 WALKING WITH THE ENEMY 2013(日本公開:2018)米・加・ハンガリールーマニア合作 124分 製作・監督:マーク・シュミット (検索しても詳細不明の人物 名前からするとドイツ系米人か。)全編英語版で、なんとなく違和感。

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ナチス絡みの作品を見ることが多いのですが、舞台がハンガリーというのはかなり珍しいでしょう。名優ベン・キングスリー(Ben Kingsley)ハンガリーの摂政(事実上国王)役で出演している以外は二流の俳優陣のようです。

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摂政役のベン・キングスリー、ズラ姿にはかなりの違和感。

戦争末期、ハンガリーはドイツと同盟関係にありますが、元来ナチスヒトラー嫌いであった摂政(元首)のホルティ・ミクローシュ(ベン・キングスリー)がナチスの敗色が濃くなる中、連合軍の一角ソ連に降伏・停戦を交渉し、一旦はスターリンが応じますが、結局うやむやのうちに、ナチスと一心同体的な極右政党、矢十字党が政権に握り、党首のサラーシが首相になり、身柄はドイツへ。息子ともども軟禁状態になります。こうして、再び実権を握った矢十字党がナチスに呼応してユダヤ人狩りを徹底していきます。

そうした時代背景で、確実に死へ追いやられる運命の在ハンガリーユダヤ人を一人でも救おうと立ち上がる学生、エレク・コーエン(ジョナス・アームストロング)を主人公に据えて勝ち目のない戦いに挑んでいく展開となります。

ナチスが圧倒的な軍事力で踏み躙った周辺国は多数ありますが、ハンガリーの状況がどうであったか、なかなか知る機会がなかったので、自分にとってはとても新鮮な内容でした。ラストシーンが13年後のニューヨークで、エレクの養子になった子の結婚式という典型的なハッピーエンドだったのはよかったですが、まあ映画としては明らかにB級作品。戦闘シーンはなかなかの迫力でしたが。

一部実話を基にしているらしいのですが、主人公たちが実際になりすましたのはナチスではなく矢十字党員で、いくらなんでもたまたま殺害してしまったナチスの将校の制服を着用していても、すぐバレるに違いないわけで、本作のように何度も偽ナチス将校で通るはずがないのです。ここら辺はまず相当無理な設定と思わざるを得ません。

ただ、ナチスに化ないとインパクトが薄いと思ったのでしょう、かなり強引な変更を加えたために、却ってそれが仇となりました。わざとらしいタイトルでもそれは感じられます。この邦題もどうかと思いますが。

画像はIMDbから拝借しました。