ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「定められし運命」

210202 MARGRÉ-ELLES (英語タイトル AGAINST THEIR WILL, 彼女たちの意思に反して)

仏 2012  92分 監督:ドゥニ・マルヴァル

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根っこにあるのはいかにもナチスがやりそうなおぞましい話で、胸が悪くなる。レーベンスボルンと称する組織は実際にドイツ内のあちこち、また一部ポーランドやノールウェイにも存在した記録がある。要するに金髪碧眼のアーリア人種増産計画の受け皿となった施設。

非人道的で、戦後、国家として正式に抗議したのはノールウェイだけだったらしいとは!戦時下とは言え、本作で取り上げられている犠牲者を出している肝心のフランスは何もしていない。

第2次大戦末期、ドイツ領となったストラスブールでは、若い独身女性が軍需工場へと駆り出される。着いた先で彼女たちを待ち受けていたのは、過酷で危険極まりない爆弾製造作業。というのは表向きで、実は・・・。

まことに不快なストーリーではあるが、エンディングに希望が持てるような展開にしてある点は評価できる。レーベンスボルンで、ナチス将校から無理矢理生まされた子供は、今はすっかり素敵な女性に成長、今度は彼女自身が出産を待つ身。自分をここまで育ててくれた育ての親に感謝しつつ、当時の話をヴィデオに撮影するのだった。

ストラスブールは、中高時代の友人が現地の女性と結婚して暮らしているところで、たまたま8年前に4泊ほど滞在した。ライン川を越えればドイツ領という立地で、有史以来、領有が目まぐるしく変わってきた。1940年にドイツ領になったが、その後1944年に連合軍側が取り返して、仏領になり現在に至っている。独仏双方の文化が重層化しているから、われわれのような人種から見ると興味が尽きない。

当然ながら、住民は普通に独仏語を操るし、街の標識は二ヵ国表示となっている。赤茶けた独特の色彩を放つ大聖堂に代表される歴史の重みをずっしりと感じるが、面白いのは、中央駅。ドイツ時代にできた見るからに堅牢な角ばった駅舎を、すっぽりと宇宙基地のように丸みを帯びた半透明ガラス状の巨大なバルーン状のものが覆っていて、これぞフランスと思わせる。

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外はフランス、中はドイツ。

フランス人のデザインというのは、車で言えばシトロエン、空港で言えばパリのシャルル・ドゴール空港(第1ターミナル)に見られる、融通無碍で楽しいものが多いが、ここの中央駅もまさにフランス人魂を感じさせる。

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シトロエンDS23

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愚亭がまだ駐在していた1974年に完成したシャルル・ドゴール空港第1ターミナル

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その内部