ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

銀座2丁目のギャラリーへ

170124 銀座1丁目と2丁目に挟まれた狭い道にある細長いビル、そのてっぺん、9階にあるごく小さな画廊、その名も「うとうと」と何やら可愛らしい。L字型で、なかなかおしゃれな佇まいである。ちょっとしたミニコンサートの会場にも使われるらしい。

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窓から見下ろすと階下にトリコローレが。並木通りのピッツェリーアだ。

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さて、ここまで来てしまったのは、友人の紹介で知り合った中村一雄画伯のご子息、中村ヨウイチさんの彫金の作品を見るのが目的。

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メキシコでも修行されたようだが、銀や真鍮を使ったアクセサリー類がほとんど。

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即売していて、手頃な価格が付けられている。現在は京都にお住まいだが、作品の味わいには、どこか中米風で、見ているうちに、3年前に旅行したメキシコの風土が懐かしく思い出された。

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「ヒトラーの忘れもの」

170124 原題:UNDER SANDETデンマーク語と思うが、「砂の下」という意味だろう。ただ、上映館では、なぜかLAND OF MINE(「地雷の土地」、同時に「私の土地」とも)とタイトル表示。エンドロールも英語表示だったから、当初から国際映画祭出品を考えてのことだろう。デンマーク・ドイツ合作 監督・脚本:マーチン・サントフリート

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こういう実話があったことすら、日本ではほとんど知られていないと思う。第2次大戦で、ナチス・ドイツに国土を蹂躙されたデンマーク、その海外沿いにナチスが埋設した地雷、実に150万個と、想像を絶する数字だ。

物語は、その一部、それでも2万個ほどを、憎っくきナチスの捕虜、それも本作に登場するのは、年端も行かぬ少年(多分14,5歳から18歳ぐらいまで)14名を使って、決められた期間内に浜から除去させる一部始終を描く。

報復措置とは言え、あまりに人道から外れたことをデンマークはやったものだ。(ところがどうも実際は、この作戦は英国軍が担当し、陣頭指揮はナチのしかるべき士官が当たったというから、その辺は少しフィクションが入っているかも知れない。しかし、デンマークが国として、これを容認していたことは間違いない。)

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⬆︎砂浜で鉄の棒を差し込みながら、慎重に地雷を探していく。来る日も来る日も。

なぜか英語で、Parachute Regimentという腕章をつけたデンマーク軍の軍曹が主人公。今こそ報復の時とばかり、相手が少年だろうと容赦しない。殴る蹴るは当たり前、時には何日も食事すら与えないと非道の限りを尽くしながら、ひたすら地雷除去作業を進めさせる。

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⬆︎軍曹の上官、こいつが、ゲシュタポも凌ぐかと思われるほど極悪非道の考えの持ち主。少年兵を集め、まずは地雷の構造と信管除去の方法を解説。

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今日もまた誰かが犠牲に。

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最初の犠牲者、両腕を肩からもがれ、病院で死亡。その後も、事故は続発、除去終了後は帰国させてやるからという甘言(軍曹はそのつもりだったが、上官にはその意向はなく、結果的に軍曹を騙していたことが、後に判明)を唯一の希望に頑張り、やっと除去し尽くしたと思ったら・・・信管を外した地雷を集め、トラックに乗せる作業中、つい手元が狂い、大爆発、一気に8人の仲間を失う。

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⬆︎時には、こうして軍曹と少年たちの間に心を通わすような瞬間も訪れるのだが・・・。

最後の暗転は、軍曹にこれから起こるだろう運命を暗示しているのだろうか。

とにかく、いつ爆発するか、ハラハラドキドキしながら見ているから、眠気を催す暇は全くなし。見始めてから、本作を選んだのを一瞬後悔するほど、ビクビクしながら見ていた。

どんなに人を憎んでも、それがずーっと続くこともないし、状況により消え去ることがあることをこの作品は教えてくれる。戦争秘話であり戦争悲話でもある。

最後のテロップで、2000人のドイツ人捕虜が150万個の地雷除去に従事させられ、半数以上が死亡、ないし手足を失ったと流れる。声もない。

#4 画像はIMdb及びALLCINEMA on lineから

 

 

二期会公演「トスカ」の予告編「プレ・ソワレ」@アニェッリホール

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演出家、アレッサンドロ・タレーヴィが語り、高橋絵理さん、前川健生くんが歌うイベントへ。2月の本公演の予告編のようなイベントで、入場無料。本公演を聞く予定がないのに、予告編だけ見に行ったような格好になった。ちなみに、このお二人は、本公演での出演予定はない。(カバーで出られるのかも)

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マイクの調子のせいか、本人と通訳の声のトーンが愚亭の耳には届きにくい音質で、さらに昼間の飲酒がまだ尾を引いていたのか、ほとんど講演の方は印象に残っていない。

その代わりと言ってはなんだが、4曲はしっかり聴いた。

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絵理さん、目にも鮮やかな真紅のドレスで、Vissi d'arte vissi d'amoreを見事に歌い上げた。前川くんとの第1幕のシェーナも、演技も含めて魅入られるトスカだった。本公演で歌わせてあげたいと思ったが、そんな機会はすぐ来るだろう。

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ブレちまったが、自分でもまあまあ満足げな表情はしっかり捉えられたかな。

#2

「ザ・コンサルタント」

170122 原題:THE ACCOUNTANT (会計士)、米 128分、監督:ギャビン・オコナー

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主人公のクリスチャン(ベン・アフレック)は、アスペルガー症候群自閉症の一種)で、他人とのコミュニケーションは大の苦手だが、数字には異常に強い特性を生かして、会計士をやっている。

だが、実は、彼には裏の顔があり、裏社会のマネーロンダリングを捌いたりもしていて、財務省特別捜査官キング(J.K.シモンズ)にマークされている。

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キングは、腕利き捜査官の一人、メディーナに犯罪歴があることを突き止める。弱みを握られた彼女は、徹底的にクリスチャンの身辺を洗えとするキングの要求に従わざるを得ない。

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ある巨大企業からの依頼で、過去に不正会計があるという情報がトップにもたらされたことから、これを洗い出す作業を任されるクリスチャン、なんと15年分もの資料を整理し、たった一晩で70億円の使い込みがあったことを突き止めてみせる。右側は企業側担当者のデイナ(アナ・ケンドリック

かくして事件に巻き込まれていくクリスチャンだったが、少年時代に生きるすべの一つとして父親から徹底的に叩き込まれた格闘技術を駆使して、鮮やかに敵対する勢力に立ち向かっていくのだった。

ベン・アフレック、役柄上、ほとんど喋らないし無表情ゆえ、却って難しい演技となったろう。本作では、ちょっとむくんだ印象を受ける。仕事上親しくなったデイナを自分のトレーラーに招待する場面がある。アスペルガー症候群特有の、室内の物の置き方や整理の仕方、靴やジャケット類の並べ方などに戸惑うものの、次第に親密度を増したがるデイナに対し、冷淡とも思えるほど距離を保つクリスチャン。

従って、ラブシーンはゼロ、狭い空間での銃や素手による格闘技が終盤の見せ場。男の映画。退屈は一切しない。邦題を、原意の会計士とせず、コンサルタントにしたのは、見事だ。

#3 (画像はIMdb及びALLCINEMA on lineから)

「ラオス会」の新年会

170121  53年前に一緒に横浜から船出した”船友”たちとの集い「ラオス会」については、何度もここに登場しているので、詳細は省くが、毎年、この時期になると里帰りする、サクラメント在住の柔道家(昨年、女性としては最高位の9段に)を囲んで新年会を開催している。昨年は二人の会員が病没、会員も10名近くまで減って、寂しい限りだ。

今回も新宿の中華料理屋での昼食会となったが、美術商をされていたY氏が、献杯が終わると、何やらごそごそご自分の荷物から取り出し、卓に並べ始めるではないか。

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これが、何とご自分の所蔵するお宝の中のほんの一部、リキュール用の小グラスやらぐい呑。左端のグラッパをこれら骨董的価値の高い容器で、みなさんに飲んでもらおうという趣向。恐れ入りました!ボヘミア、ラリック、ドーム兄弟古伊万里、柿右衛門、etc.

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こちらは珍しい模様が彫られたバカラ。こんなグラスで飲むワインは、また格別なお味で、まさに至福の一刻。

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Daum Nancyの銘が見える。

次回は、毎年5月に、名古屋から展覧会(三軌会)の出展で上京するT画伯を迎えての開催となる。