ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

深川江戸資料館(清澄白河)

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ここは、資料館と言うが、ちょっとしたホールも付設されていて、過去、カミさんのシャンソン発表会で数度、またオペラ(IL TROVATORE)や、オペラ・コンサートで何度も来ているのだが、肝心の資料館に入ったことがなかった。

資料館概要は、資料から抜粋:

資料展示室は、地下1階から地上2階までの吹き抜け空間に、江戸時代(1842年から1843年を想定)の深川の町並みや庶民の生活ぶりを再現。
長屋2棟をはじめ八百屋、春米屋、火の見櫓、猪牙舟の浮かぶ掘割、船宿のたたずまいなどをはじめ、家の中の生活用品類一つ一つにまで細かく気を配って再現して、実際にてにとって見ることができる。さらに、深川の一日の暮らしを音響と照明効果で演出している。たとえば、夏の時期は、夜明けの照明に始まり、鶏の鳴き声、あさり売りや金魚売りの声、雨の音、虹や夕焼け等を表現し、下町情緒を盛り上げ、170年前の深川の世界へと誘ってくる。

というわけで、実物大で、実際に内部に入ったり、家財道具などに実際に触れられるところがミソ。同じような展示をしている江戸東京博物館とはそこが大きく異なる。

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⬆︎米屋、魚屋などが並ぶ一角。屋根には実物より大きめの猫がいて、定期的にリアルな動きでニャーとなくようになっている。

 

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⬆︎左側、お休み処で、お茶やちょっとした食べ物を出すところ。右側は天麩羅屋台。

ヴォランティアの案内役(女子大生風?)が、すぐ気さくに声をかけてくれて、当方の質問に一つ一つ丁寧に説明してくれるのは、大変ありがたい。街並みは、今も永代橋付近に存在する佐賀町をモデルにしている。一軒ずつに住人の名前があり、家族構成や職業も決められていて、ストーリー性があるので、説明も分かりやすい。

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⬆︎手前は、そば、うどんを出す屋台。天秤棒で、簡単に移動できるようになっている。犬がおしっこをひっかけているのは火の見櫓。

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江戸を愛した文筆家、漫画家、杉浦日向子の企画展が間もなく開催される予定。一貫して江戸風俗を研究していて、テレビにもしばしば登場していたが、2005年、46歳の若さで亡くなっている。

中村真木彫刻展@オリエアート・ギャラリー(外苑前)

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ど迫力の大作「ばら」

「日本、イタリア・カラーラを中心に国際的に活躍する彫刻家、中村真木の個展。水、風、植物といった自然をテーマにした彫刻作品は、優美で精神性の高さを感じさせる。ミケランジェロピエタ」で用いられた大理石など、カラーラ産大理石を中心に、世界各国の貴重な大理石とブロンズ作品12点を展示。」

以上、主催者のホームページから抜粋。

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彼女の作品では珍しいブロンズ製。彫刻したものを、細かい注文をつけてブロンズ専門家に発注するらしい。

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Daphne III 106 x 36 x 26cm

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父親は外交官で、一時期、大学でイタリア史の講義を受け持っており、愚亭も教え子の一人。その後、イタリア大使館勤務となり、一家でローマへ。彼女は日本とイタリアを行ったり来たり。もともと絵を描くことが好きだったこともあり、高2の時にローマの美術アカデミーへ進学。さらにパリのエコール・デ・ボーザールなどで彫刻家としての腕を磨いたようだ。

愚亭の大学時代、イタリアで何度か出会っている。今回、共通の友人たちと一緒に鑑賞してきた。彼女の作品は2011年秋、実家のある茅ヶ崎の市立美術館開催の個展で鑑賞して以来、7年ぶりに再会することになった。

極めて男性的とも言えるダイナミックなフォルムに、女性的なハーモニーを感じさせる細かいタッチを巧みに組み合わせた作品に特徴がある。

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カラーラ時代の作品。あの巨大な大理石の山からわずか5%としか採れない純白の石を使用した作品。ちなみに、サン・ピエトロ寺院にあるミケランジェロ、20代の作品「ピエタ」もこの石を使用している。

彼女曰く、大作を作るにはなみなみならぬエネルギーが必要で、もはや大きな石に立ち向かってノミを振るう体力も落ち、これからは小さめの作品を中心に彫り続けることになりそうとか。

国内はもとより海外にも多数彼女の作品が公共施設や企業の社屋の中庭や玄関ホールに置かれているのは、彫刻家冥利に尽きるだろう。

大田区文化祭 第117回合唱祭、まさかの幕切れ!

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恒例の大田区民合唱祭、117回目で前代未聞の幕切れになろうとは!

運営委員の一人として、愚亭も舞台下手袖で、各種雑事をこなすが、毎回のことながら、高齢者には過酷な一日となる。指定の8時半にアプリコに到着。まだ解錠前で、他の委員や理事たちと立ち話。解錠後、舞台裏へ移動、さっそく作業開始。

今回は、実に62団体もの出場が予定されているから、順調に行っても、最後の合唱団が歌い終わるのは午後8時少し前という超過密状態。時間通りに終わらせられるかは、スムーズな舞台進行にかかっている。

譜面台、指揮台の要・不要、舞台上のピアノの位置、蓋の高さなど、団によってさまざまな注文が入っている。この細かい注文に応えるために我々舞台担当スタッフが迅速に作業をこなしていくわけだが、スタッフのハケと次の演奏団体入場が交錯しないよう、今回から、スタッフもすべて上手側にハケるようにしたのだが、思ったほどの効果が得られなかったのは意外だった。

概ね10分ほど予定より遅れて、いよいよ終盤、午後6時40分を少し回った頃、それは起きた。指揮者が突如指揮台から前のめりに床にばったり!顔面を激しく床面に打ち付けたから、口まわりから出血し、その衝撃も尋常ではない様子。

後で知ったことだが、持病の心臓発作だそうで、舞台上も会場内も騒然!「はやく緞帳を下ろして〜」「救急車、呼んで〜」、「AED、速く速く!」あちこちで悲鳴が上がる。

当日は緞帳は下げられない舞台仕様だから、ホワイトボードを衝立代わりに。偶然会場に看護婦がおり、また合唱団の中に医者もいたので、応急治療にあたる事ができた。そのお陰もあり、救急車到着直前に本人の意識が戻り、近くの東邦医大病院へ緊急搬送された。しかし、事が事だけに、また時間的なこともあり、8団体を残して、その時点で主催者は合唱祭の中止を決めた。

てきぱき指示を飛ばして迅速な事後処理に当たった理事長ほか理事たちの見事な連携プレイは称賛に値すると思う。

かくして今年の合唱祭は、なんとも予想外の幕切れとなったのだった。

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我が団は合唱組曲蔵王」から「蔵王賛歌」、「苔の花」の2曲を歌った。

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舞台脇で、出番を待つ団員たち。緊張の中にも笑顔がこぼれる団員も。

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終演後、指導の先生方、ピアニストと一緒に記念撮影。さて、我が団のパフォーマンスに対する評価は・・・当日会場にいらした指導者の一人からは「さわやかな感じでテンポ感もよかった反面、音程の低い部分が多く、高い音は広がり過ぎで、 発声に多少乱れが」と厳しいもの。まだまだゴールは遠そうだ。気を取り直して、来週からまた練習に励ままないとね。

前沢淑子写真展「イタリア・くらしのうた」@Atte(タチカワブラインド銀座スペース)

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日生劇場での観劇のあと、銀座8丁目へ廻り、地元合唱団の仲間の一人が開催した写真展へ。

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愚亭もイタリアは詳しい方だと思っていたが、行っていないところが大半。シチリアを除く全土を隈なく巡って、それもかなり奥まで入り込んで撮影してきたようだ。

北は仏国境沿いのアオスタ、あるいはオーストリアとの国境近く、ドロミーティ付近から、南は長靴の先っぽや土踏まず付近まで、よくぞここまでと感嘆あるのみ。それも理解あるご主人が運転してくれたお陰らしい。

風景主体だが、地方都市の住民たちの日常生活ぶりも捉えられていて、期待以上の力作ぞろい。

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オペラ「コジ・ファン・トゥッテ」@日生劇場

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珍しいオペラを見た。斬新なプロダクションは珍しくないが、この演出は主役女性二人をAI化させているところが、いかにも現代風で、そこがとりわけ興味を惹かれる。

まあしかし、この種の新解釈、新演出って、賛否、別れるのは必定。「なんだ、こりゃ」感が冒頭拭えなかったのは事実だが、次第に慣らされて行ったように感じた。

コスチューム、舞台美術、照明など、いずれもが大変クリエイティブなデザインで、感心させられた。

ソリスト陣、両組ともなかなか見事な布陣となっている。愚亭が見たのは上で青く囲った陣容。いずれ劣らぬ芸達者で、堪能しきった。ゆえに個別のコメントはこの際、やめておこう。

着ぐるみで出ずっぱりだったロボットたちの可愛らしい演技も見もの!(カーテン・コールで着ぐるみを脱いだ演者たちが、汗びっしょりの姿を見せる。ちょっと気の毒!)

合唱団にも、知っている顔が何人か。こちらも、素晴らしい演唱で文句なし。オケは名門読響だし、鍛錬されきったサウンドが耳に心地よく響いた。

過去十数回は見ているはずのコジ・ファン・トゥッテだが、今回ほどじっくりアリア、重唱に聞き惚れた公演は皆無とは言わないまでも少なかったと思う。それほど耳馴染みのないアリアやシェーナばかりで、自分の中ではモーツァルトのオペラでも低い位置を締めてきたのだが、今回じっくり観て、聴いて、四大オペラに入る筈と、妙に納得が行った次第。

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