ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「マイセン動物園展」@パナソニック美術館(汐留)内覧会へ

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このところ抽選運が強いらしく、今回のブロガー内覧会にもお招きいただけた。

マイセンの洗礼を浴びたのは大昔マイセンへ行く機会があったからだ。まだ東独時代の話。いかに優れた焼き物かは、ガイドの力説を待つまでもなく一定の予備知識はもっていたものの、工房での作業風景なども見せてもらい、そのすごさは想像以上だった。その場で販売もしているので、適当なものを物色したが、市価と同じと聞かされ、かなりがっかりした覚えがある。でも、せっかく来たのでかなり小さなお皿を一枚買い求めた。

今回の展覧会は彫像作品、いわゆるフィギュアもの、それも動物をモチーフにしたものに限定した、かなり珍しい展覧会である。陶磁器ファンでなくても必見の展覧会。パナソニック美術館で9月23日まで。詳細→同美術館ホームページ

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度肝を抜かれるその細密具合!

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上のパンフレットにある猿の楽団は詳細に見ると・・・

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モンキー・マエストロ

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フルート吹きは上品ないでたちに

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逆に大道芸人が扱うようなハーディ・ガーディを弾く猿にはこんな衣装を

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底部の穴の中をよく見ると、カナリアか、黄色い小鳥が見える。

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スノーボールてんこ盛りだが、これについては、こんな説明がある。

18世紀に生まれたロココの華、スノーボールと呼ばれる貼花装飾(手作業で作られる花や葉の磁器装飾)。コレクターが非常に多いマイセン装飾作品の一つ。ブルーオニオンの次に有名なマイセンのシリーズで、ガマズミの白い花衣装をまとっている。花弁の一つ一つが型と手のひらを使って作られており、焼成前の磁器の表面に丁寧に貼り付けている。表面をおおうガマズミの小花が、見るものに強いインパクトを与える。ガマズミは、小花が紫陽花に似た手まり状の房をつくるスイカズラ科ガマズミ属の低木のこと。

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丁寧に解説いただいたのは担当学芸員の岩井美恵子さん。彼女から、この先からは個人所蔵のものとなるため、撮影は禁止だが、内覧会に限り、一点撮りでなければ、つまり周囲も含めての撮影ならばOKとのお達し。こういう特典はかなり嬉しい!

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第3章はいよいよ動物が主役。ここからは1点撮りは禁止です。周囲も映しこむようにと注意が。

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最後に展示されていた作品。顔を捻った姿といい、可愛い爪の出ている手足、鼻の先端の輝きなど、見事に捉えていて、掉尾を飾るにふさわしい作品。

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上の年表で、いかにして世界に冠たる磁器、マイセンがこの世に誕生し、紆余曲折を経て、今の地位を築いたかよく分かる。

なお、マイセンの刻印だが、学芸員に確認したところ、すべてフィギュアものにも必ずどこかに見られるものであるそうだ。

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制作年代が人目に分かるマイセン刻印

 

常設のジョルジュ・ルオーの特別展も少し覗いてみた。

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実物と比較するとこの複製画がいかにすぐれたものかよく分かる。原画の表面の凹凸まで再現されているような錯覚を受ける。

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会期は9月23日まで。

なお、掲示した写真は一部を除き、主催者から特別な許可をいただいて撮影したものです。

「巴里祭」

190705 QUATORUZE JUILLET(7月14日)1933 仏 脚本・監督:ルネ・クレール(1898-1981 「巴里の屋根の下」'30, 「リラの門」'57)

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窓辺で思いに耽るアンナ(アナベル

巴里祭前日、パリのモンマルトル地区では、誰もがウキウキと準備に余念がない。と言っても、今では子供騙しのような大きな風船のような飾り付けや三色旗を窓の桟や枠にひもで結び程度のことだが、それが楽しくて仕方ない様子。そんな中で、1組の男女、ジャンとアンナがままごとのような恋を育もうとしている。

1933年(昭和8年)のパリ、ほとんどの人々はまだ貧しいが、第2次大戦まで後6年という微妙な時期でも、まだ平穏な日々を楽しむ余裕があるような印象を受ける。

ジャンはタクシーの運転手、アンナは花売り娘(?)、街へ出て前夜祭のダンスを楽しむことに。帰り道、急な雨にたたられ、雨宿り。愛を確かめ合う二人。だが、ジャンが部屋に戻ると、元カノのポーラが。焼けボックリに・・・で、怒ったアンナは他所へ。

ポーラはよからぬ仲間にジャンを引き入れ、ある日、アンナが雇われているカフェに押し入る。店の外で見張り役のジャンは、仲間がアンナを襲う場面に、我を忘れてアンナを救出、無事よりを戻すという、他愛もない、至極単純な展開だが可愛らしい作品。

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ジャンの運転するタクシーとアンナの押す花ぐるまがニアミスで大騒ぎに。

パリ市内でのロケはなく、すべてセットで撮影したそうだが、それにしては、坂の多いモンマルトルの感じがよく出ている。

何と言ってもアンナを演じるアナベラ(1907-96「北ホテル」'38)の純真な姿がいい。撮影時は26歳。それとモーリス・ジョベールの名曲、A PARIS, DANS CHAQUE FAUBOURが全編に流れ、素晴らしい雰囲気を醸し出している。 

因みにこの時代だと、「会議は踊る」('31独)、「キングコング」'33米、「伊豆の踊り子」'33日本」などが公開されている。本作は1933年1月フランスで上映開始、そして、その3ヶ月後には日本公開というのは驚きの速さだ。まだやっとトーキーが普及し始めた頃であり、カラー作品出現にはあと数年待たねばならない。

#39 画像はALLCINEMA ON LINEとIMBd、動画はYouTubeから。

「ミサ・ソレムニス」フィルハーモニック・コーラス第7回定期演奏会@アプリコ大ホール

 

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初めて生でというわけではないが、随分長いこと聞いていないミサ曲で、今回はじっくりと堪能。この作品の素晴らしさをたっぷりと味わい尽くした感じがする。

ベートーベンは若い頃にハ長調のミサ曲を作曲していて、ソレムニスの方は晩年、亡くなる4年ほど前の作品。まさに魂が乗り移ったかの如き荘厳さに満ちている。そして、この後に完成するのが第九である。こうしたことも念頭に置いて聴くと、また特別な感慨に浸ることができる。

この楽団、合唱団の演奏を聴くのは初めて。オケも合唱も若い力が漲り、じつに清々しい演奏で、感銘を受ける。(普段、高齢者ばかりの合唱団で歌っているせいだろう、きっと)

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昨日に続いて、またも左側バルコニー席。今日は3列目の右端

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開演10分ほど前で、すでに1階はほぼ満席に近い状態

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高原亜希子の透明感たっぷりの美声が場内を潤していたのが特に印象に残る。こうした宗教曲向きの発声のような気がする。

彼女とは昨年末、「労音第九」で同じ舞台に乗り、その際、昔の職場の後輩の娘と知って、さっそく挨拶をしておいたが、その時は合唱席からしか聞けなかったので、まともに聴けたのは今回が初めて。

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独奏バイオリンがあれだけ長く演奏するというのは、予想外!見事な弾きっぷりだった。この種の曲で、独奏バイオリンと歌唱が延々と絡むのは比較的珍しいと思った。

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開演前に舞台を見ていたら、このエレクトーンが気になった。ヤマハのステージア2というモデルらしい。そういえば、昨年のオペラ椿姫の際はオケでなく、このタイプを2台とパーカッションだけで演奏したから、その威力は十分知っているが、この種の宗教音楽では、パイプオルガンがなければ、エレクトーンではなく、ポルタティーフ・オルガンを使うのかと思ったが・・・。特に違和感はなかったから、これで十分なのだろう。アプリコ大ホールはよくできたホールなのだが、パイプオルガンがないのが、痛恨!

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終演!場内、割れんばかりの大拍手、鳴り止まず。

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合唱団も凄かったが、このソリストたちの力演も見事!出番が多く大変だったろう。

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この日配布されたプログラムは出色の出来栄え。デザイン性の高さ、内容の充実ぶり、滅多にみないほど優れたものだった。

 

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高原亜希子と

 

#39 文中敬称略

読響Xアプリコ 大友直人 歓喜のブラームス+ショパンP協No.1by 牛牛

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この牛牛という若手がすごい演奏を聴かせてくれて、場内、興奮の渦。ブラーヴォが飛び交ったと言っても過言ではない。ガタイがまずでかいのに驚く。182cmぐらいの印象。手足が長く、それだけでも抜群の安定感と思わせる。果たせるかな、そのきらびやかで華麗な演奏スタイルには、おもわず身を乗り出してしまった。大変な逸材が出現したものだ。アンコールで弾いた「ラ・カンパネッラ」のまた流麗にして豪快なこと!牛牛には終始圧倒されっ放しだった。

ブラ1も凄かった。読響、大友直人、やはりひと味もふた味も違った。この楽団、日本の数ある楽団の中でも男性比率がかなり高いのに気づいた。奥の金管からパーカッションまで女性の姿、ゼロ!木管で数人、弦はさすがに3割ぐらいいたかどうか。コンバスも全員男性。ま、その構成比と演奏の良し悪しは関係ないと思うが。

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#39 文中敬称略

「僕たちは希望という名の列車に乗った」

190627 DAS SCHWEGENDE KLASSENZIMMER(沈黙の教室)独 111分 脚本・監督:ラース・クラウメ(「アイヒマンを追え!ナチスがもっとも畏れた男」'16)

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暗示的なデザインだ。彼らの未来は?

1956年秋、遊び盛りの高校生、クルトとテオ、住んでいる東独の町、スターリンシュタット(現アイゼンヒュッテンシュタット)から電車で西ベルリンへ。(一応簡単なチェックがあるだけで、この頃は西側との移動はそれほど厳しいものではなかったことが分かる)。劇映画を見ようと潜り込んだ映画館で本編上映まえに流れたニュース映画にハンガリー動乱の様子が。衝撃を受けた二人はさっそくクラスメートに相談し、2分間のの黙祷を捧げることに。

このことを当局が知ることとなったから、さあ大変!さっそく首謀者探しが始まるが、彼らの連帯意識は固く、結局分からず仕舞いとなり、その代わりクラス全員に対し厳しい処断が下りる。退学となった彼ら、このまま卒業できないことになれば、社会主義国家では将来を閉ざされるに等しい。彼らが取った秘策とは!

この中の一人が書き残した「沈黙する教室」を原作として、一部固有名詞などを変更し、ほぼ実際に起きたとおりにラース・クラウメが脚本を書き、映画化したもの。

厳しい当局の尋問に対抗する若い力がすがすがしい。首謀者探しに、自然の流れでこうなったと答え、さらに追求されると、全員が順に「私の提案です」と立ち上がる緊迫の場面は、デジャヴュ感たっぷり。どの作品か思い出せない。(これを読んだ友人から「スパルタカス」ではないかとの指摘。確かに、ローマ軍が首謀者を特定しようとすると、次々に『俺がスパルタカスだ!』と立ち上がり、混乱させる場面があった。しかし、他にも似たようなシーンのある作品があったはずだが思い出せぬ。)

東独を舞台にした作品では、「善き人のためのソナタ」、「グッバイ、レーニン」、「東ベルリンから来た女」など秀作が多い。またナチスに対抗して若い命を散らした「白バラの祈り ゾフィー・ショルの最期の日々」も思い出される。

#38 画像は IMDbから