ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

稽古も大詰め 「はじめのいっぽ」(喜歌劇「こうもり」第2幕からの抜粋上演)

200124 昨夏からの稽古もいよいよ大詰め。今日は、舞台となる大田区民プラザの大ホールで初めての通し稽古が行われた。

女性陣は当日の衣装着用、男性陣も靴だけは当日使用のエナメルシューズを履いてスタンバイ。冒頭、山台上での演技となるが、相手役女性がかなりの高身長であるので、最近身長縮小が著しい愚亭としては、対抗上、多少高めのヒールのシューズを着用。

これが実は階段を降りる時がけっこう危ない。しかも、今日初めて見る山台の高さはなんと1m以上もあり、一気に恐怖心にとらわれる。さらに、当日は眼鏡も外すように言われているから、この山台から降りるときの怖さはきっと半端ないはず。しかも、相手役女性に腕を取られているから、まさにじっとり冷や汗もの。

幸い、危ないのはこの場面のみで、続けているうちに徐々に慣れてきたが、一時は別のシューズを履くか、あるいはコンタクトレンズ使用も考えたほど。練習が終わる頃には、「まあ、なんとかなるだろう」という境地に。

ほかに、途中で上手から下手へ移動するところがあるのだが、裏導線は楽屋の廊下!そこを疾走する。たまたま逆方向に走るソプラノもいて、互いに走りながらハイタッチなどをして励まし合う。下手袖に到着するやいなや、即出番だから、結構綱渡りなのだ。

今日は、ソリストによる演奏もすべて実際通り盛り込まれたので、合唱団はスタンバイが結構長かったが、それでも全部通しで1時間弱であることが確認された。

明日はメイクの講習会と直し稽古、そして、2/1のゲネを経て2/2、本番を迎える。乞うご期待!

初めての気管支鏡検査

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昨夏、区が実施している無料検診でひっかかった右肺下部にある小さな影、秋以降、レントゲン、CT,  MRI, PET検診、さらに喀痰検査までやったが、正体不明のまま。やはり放置するのはまずいということで、気管支鏡で直接患部から一部掻き取ってチェックすることに。

まさか最初の診察からこれだけ長期に及ぶことは想定外。もしものことがあると、来月初頭に予定されている大田区主催の区民オペレッタ「こうもり」に間に合わないので、時期選定には悩まされたが、結局昨日、無事検査は終了。怪しげな正体判明には来週まで待つ必要はあるが、とりあえず、無事退院できて、今日は久しぶりにワインがおいしかった。

当初、医師から詳しい説明がなかったので、胃部のカメラ検診程度に軽く考えていたところ、これがさにあらず、予想外に大変な手術だった。まずは喉の奥に麻酔剤をたっぷり噴霧するのだが、これが咳き込む、むせるでこんな辛い思いをするとは思わなかった。麻酔が効いた頃合いを見計らって、手術台に乗せられるのだが、医師二人と看護師三人という体制で、心穏やかではなかった。

麻酔が効いているから、気管支鏡が口から差し込まれても喉周辺の違和感はまったく感得することなく、約1時間で終了となり、ベッドのまま病室まで運ばれる途中で、たまたま見舞いに来たカミさんと同じエレベーターに乗り合わせた。大丈夫なのだが、麻酔で声が出ない。このまま元の声に戻らなかったらどうしようと一抹の不安を感じながら、1日が終了。幸い、3時間後にはほぼ正常に戻っていて、まずは一安心。

池上総合病院は東海大系の病院、家から徒歩10分もかからないので、何かと好都合。今回の入院は2008年8月の虫垂炎手術以来であった。その時の様子→「ちょっと入院」

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1/20 喉まわりの麻酔から正常に復帰直後の夕食。案外美味しかった。


 

「再会の夏」

200114 LE COLLIER ROUGE(赤い首輪)87分、仏・ベルギー合作 脚本・監督:ジャン・ベッケル

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舞台は1919年夏、フランスの片田舎。軍判事でもあるランティエ少佐はリタイア直前の最後の仕事として、汗を拭きふき、村にやってくる。留置されている元兵士モラックの取り調べで、早いとこ決着をつけて穏やかに引退したいと考えている。

留置所まえに、一匹の黒い大型犬がしきりに吠え立てている。そこには深い事情があったのだ。

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という具合に始まる作品、同監督の「クリクリのいた夏」や「ピエロの赤い鼻」にどこか共通する香りがのっけからプンプン匂う。ちなみに製作者の一人、ルイ・ベッケルはジャンの息子であるから、ジャック・ベッケルから三代続けての映画人ということになる。

第一次大戦で、酸鼻を極めた独軍との塹壕戦に兵士として取られ、農作業もままならない悲惨な境遇に陥る家族を扱った作品が少なくない。昨年夏にみた「田園の守り人たち」もそっくりな設定であった。

本作では赤い首輪をしたこの黒い犬が重要な役割を担っていて、その演技は間違いなく表彰もの。

負傷するも戦功を立て、レジョン・ドヌール(フランスの最高勲章)を授与されたジャックがなぜ留置され、さらに、妻と息子の待つ家に帰りたくないと片意地をはるのか、謎が明かされて終わる。

それにしても、仏独の塹壕戦のむごたらしさと無意味さは「西部戦線、異常なし」に詳しいが、互いに兵士だけを犠牲にして、実に500万人を無駄にした消耗戦!最前線の兵士たちには厭戦気分が横溢、ついに兵士同士が肩を組み合う寸前まで行く場面が本作に描かれている。画面では、安南人という字幕が出るが、ベトナム人のことで、祖国から遠く離れたところで、肉弾戦で命を落としたベトナム人が少なからざるいたという事実にも驚かされる。

いかにもジャン・ベッケルらしい作品。見に行ってよかった。

#1 画像はIMBdから。ネトフリとアマゾン・プライムのせいで、本年、映画館で見たのはやっと1本目!

ウィーン・サロン・オーケストラ@アプリコ大ホール

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よくウィーンとかナポリとか適当に名前を冠して、実は現地ではまったく無名の団体の来日公演があるのだが、この楽団は、その点では素性のしっかりした楽団のようだ。

今日は前から4列目で、久しぶりにカミさんと優雅なウィーンの調べを心ゆくまで堪能できた。とりわけ楽しんだのは、オケの手前のスペースを広く使ってのダンス。やはり手足が長く小顔のダンサーが所狭しと踊るのは見ていて気持ちがいい。残念ながら、日本人の場合はこうは行かないから、貴重な機会だった。

さらに、ソプラノとテノール、二人とも舞台映えする姿であるから、歌唱もさることながら、ま、一言で言えばかっこいいのだ。まさに絵になるとはこのこと。終わってからの一連の大きな仕草も、不自然さがまったくなく、やはり本場のアーティストは違う。

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面白かったのは、「エジプト行進曲」と「農夫のポルカ」で、突然、大声で「ららら〜♩」と歌い始めたことで、弦楽奏者全員と、演奏していない管楽器奏者も加わっての大合唱。初めは、一瞬合唱団がどっかに?と思ったほど。長いことクラシックを聞いているが、こんなことは初めてだ。

レハールの超有名な二重唱「閉ざした唇に」、やはり本場の歌手が歌うとかくも美しいかと、しばし陶然となった。

アンコールは3曲、2曲目はなんと「浜辺の歌」の編曲バージョン、そして最後は恒例の「ラデツキー行進曲」で、景気良く会場全体が手拍子で終演。

と、最後にハプニング!最前列にいたどっかのオヤジが突然舞台に近づき、コンマス、ツヴェルファーに握手を求めるではないか。一瞬のことだから、スタッフが制止することもならず、ツヴェルファーも止むを得ずニコニコと応じていたが、あり得べからざること!花束でも渡すならともかく出演者に握手を求めるとは、開いた口が塞がらない。これが蒲田の土地柄!って思う人もいそうで、残念至極!

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その現場

#4

「ジャンニ・スキッキ」 オーケストラ「☆の王子様」第49回定期演奏会

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このマンガチックな表紙デザインも愉快!

facebookでこの公演のことを知って、急遽荻窪へ。キャスティングがまた豪華なこと!

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演奏会形式だが、衣装も振りもたっぷり。演出家の記載がないが、自らも重要な役で出演している、ミャゴラトーリの大澤恒夫が担当。また冴えてた字幕も彼の手になるもの。ついでながら、前半の「ロミオとジュリエット」にも演奏だけでなく、寸劇として二人(澤崎一了宮地江奈)が登場、奥のP席には舞台回し役の形で帽子をかぶった少年(森 真奈美)として登場させていて、なかなか面白い趣向と思った。

さて、ジャンニだが、これは毎回、かならず笑わせてもらっているが、今日も、終始ゲラゲラと笑っていて、演出の妙に感じ入った次第。杉並公会堂大ホールの舞台の構造を巧みに利用して、舞台手前、オケの奥、一段高くなったスペース、さらにその上のP席と近景・中景・遠景と使い分け(まあ、よくある手法としても)見応えたっぷりだった。

開幕と同時に、オケの団員に混じって、まずツィータ(巌淵真理)とチェスカ(藤長静佳)が悲しみを堪える表情で第1ヴァイオリンの手前に置かれた座ると、しばらくしてブオーゾ(実はマエストロ柴田真郁)の死体をマットレスにくるんで、男性陣が舞台中央まで重そうに運び、そこに寝かせたまま放置。続いてコンミスが白い百合の花を一輪持って出てくると、ツィータやチェスカが耐えきれずに嗚咽。

ふと見ると死体がモゾモゾ。観客席の方を盗み見る姿でむっくり起き上がり、頭に被せられた三角巾をやにわに投げ捨て、白装束のまま指揮台へ。かくして、開演となる演出は結構笑わせてくれた。

出演者は芸達者揃いだから、なんの違和感もないまま、ひたすら楽しんだ。澤崎一了の「フィレンツェは花咲く木のように」、そして一番の聴かせどころ、宮地江奈の「私のお父さん」で盛り上げ、そこからの展開が実に面白いのだ。

満を持して登場するジャンニ役の谷 友博がさすがの歌唱と演技!上品なマフィアという感じの演技であり、歌唱であった。この人、下の声があんな響くとは、改めて感心。

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澤崎一了は完全にカメラ目線!

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左端、ブオーゾ役のマエストロ。右から三戸大久、千葉裕一、安東玄人、岸本大

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チャーミングな宮地江奈。どこか初々しい!

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シモーネを演じながら、全体の振り付けも担当した大澤恒夫と

#3 文中敬称略