ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

初めてゆめりあホールへ

240413 このホールのある大泉学園という駅は今回初めて利用しました。我が家からは1時間半以上。ただ、ホール自体は駅前で1分というアクセスで、ミューザ川崎やリリア川口と同類です。

昨年、愚亭が所属する地元の合唱団が定期演奏会を開いた折、演奏していただいたチェリストベアンテ・ボーマン氏をゲストにお迎えした早川揺理さんのリサイタルです。早川さんは、同合唱団の伴奏を1年半務めていただき、懇切丁寧な指導と優しい人柄が団員には大評判でした。

そんな二人が共演されるとあって、遠路をものともせず、勇んで駆けつけた次第です。演奏前に、いつもなさっているのでしょう、早川さんから簡単にご挨拶と解説が入りました。お声もそうなのですが、落ち着いた語り口がまずすばらしかったです。

で、1曲目はボーマンさんがバッハの定番をお弾きになり、初めて聴く人は、まずここで唸ったと思いますね。経歴が証明するように、大変な名手ですからね。その後、早川さんのピアノ演奏が続きます。引き慣れた曲なのでしょう、譜めくりもご自分でなさっていました。優しい音色で、ついまどろみたくもなります。

しかし、前半最後のプロコフエフの曲は一転、それこそ眠気も吹っ飛ぶぐらい激しくもきらびやかな演奏で、かなりのテクニックを要する作品でした。

後半は、前述の定期演奏会でも披露された「白鳥」、サン=サーンスの「動物の謝肉祭」からの1曲ですが、あまりに名曲でこうして単独で演奏されることの極めて多い作品で、ピアノによる前奏を聴いただけで、ゾクッとしますね。

そして、愚亭としては多分初めて聴いたシューベルトのアルペジョーネ・ソナタがまた素晴らしかった。アルペジョーネというのは、その場でボーマンさんから解説があったのですが、演奏法の一つかと思っていたら、古い楽器の名前と知りました。ギターとチェロの中間的存在で、ギターのようにフレットがついていて、見た目はギターより小型チェロという風情で、ギター・チェロという別名があるとか。

これがまた、素晴らしい曲で、多分ご本人もお気に入りのレパートリーの一つなんでしょう。もちろん、暗譜で弾かれました。

アンコールでは、これまた名曲、パブロ・カザルスの「鳥の歌」を。素敵な余韻の残して終演となりました。お二人とも、ほんとにお疲れ様でした!

 

「DUNE/デューン 砂の惑星」@AmazonPrime

240411 米 2h35m 監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ

こういう作品は映画館の大きなスクリーンで見てこそでした。配信で見れば、興味、多分半減すると思います。現在はこれの続編を上映中ですが、ま、いいかな、という感じです。

ちなみに原作は未読。ついでに第1作、1984年、あのディーノ・デ・ラウレンティスが製作に乗り出したデイヴィッド・リンチ版、未見です。名匠リンチの作品とは思えぬほど、大味で荒っぽい作品として、すこぶる不評だったようです。予告編を見ましたが、まあ、そんな感じ。

SFの名作に数えられるのでしょう。ストーリーは、ぶっちゃけ、どうでもいいという感じです。映像と音響の素晴らしさに酔えれば十分。

アカデミー賞、7部門も受賞していますが、作品賞、監督賞、俳優賞もなく、すべて撮影賞や美術賞など、技術部門のみというのも珍しい現象です。

主演のティモシー・シャラメがいいです。シャラメは確かに美貌です。どちらかと言えばジェラール・フィリップに近い美貌で、美男俳優として誉高いアラン・ドロンとは別系統か。他にも↑に見られる豪華な顔ぶれです。なんとシャーロット・ルンプリングさんが教母役でご出演!でも、ヴェールなどで覆われていて、さっぱり分かりませんでした。もったいない!

登場するメカが面白かったです。なかでもバッタのような飛び方をするヘリコプターもどきの飛行機がよくできていて、眼を見張りました。こういうのに興味をもってみるのもSFの楽しみ方の一つでしょう。

「復活」を聴きに、池袋まで

240407 今日は天気が回復、桜が満開になりました。
午後から、地元合唱団仲間の一人が出演するコンサートへ。

一月前に自分も歌ったばかりのこの曲、今日は客席からたっぷりと鑑賞してきました。マエストロはこの人、

二人の女声ソリストは、

ソプラノ 中川 郁文 Nakagawa Ikumi 兵庫県出身。奈良教育大学卒業、京都市立芸術大学大学院、サントリーホールオペラ・アカデミーを修了。’19年世界オペラコンクールNEUE STIMMENのアジア地区代表。’21年夏ザルツブルク音楽祭にYoungSingersProjectのメンバーとして日本人で初めて選抜され複数の公演にソリストとして出演。その際指揮者のA.ケリーは声の美しさと表現力の高さを絶賛した。PMF札幌、井上道義指揮サラダ音楽祭、セイジオザワ松本フェスティバル、日本各地での第九やレクイエムのソリストを務める。これまでに留学経験はないものの、国際的な舞台経験を多数持つ。これまでオペラでは《カルメン》《ラ・ボエーム》《フィガロの結婚》《こうもり》《ロメオとジュリエット》《トゥーランドット》《道化師》《椿姫》《愛の妙薬》《妖精ヴィッリ》《ドン・ジョヴァンニ》に出演、’23年、’24年小澤征爾楽塾カヴァーキャスト。

メゾ・ソプラノ 花房 英里子 Hanafusa Eriko 京都市立芸術大学音楽学部声楽専攻、首席卒業。同時に京都市長賞受賞。東京藝術大学大学院独唱専攻修了。二期会研修所マスタークラス修了。修了時に奨励賞を受賞。飯塚新人音楽コンクール第一位。2021年東京音楽コンクール第二位、併せて、聴衆賞を受賞。松方ホール音楽賞奨励賞。 コンサートでは、『第九』、『マタイ受難曲』、『復活』等の、アルト独唱者として活躍している。 オペラでは、『フィガロの結婚』ケルビーノ役、『ラインの黄金』ヴェルグンデ役、二期会ニューウェーブオペラ『アルチーナ』ルッジェーロ役、二期会本公演オペラ宮本亞門演出『蝶々夫人』スズキ役、『ファルスタッフ』メグ役、新国立劇場魔笛童子III役、『夏の夜の夢』オベロン役カバー等を務める。2023年、国立台湾交響楽団に招聘され、台北にて、準メルクル指揮『第九』アルト独唱を務める。また、日本ベトナム関係樹立50周年記念フィナーレコンサートに招聘され、ハノイにて『第九』アルト独唱を務める等、国際的なソリストとして活躍している。 2024年、二期会本公演オペラ宮本亞門演出『蝶々夫人』にスズキ役にて出演予定。二期会会員。

ちなみに、この花房さんは、プログラムに掲載されたドイツ語歌詞の対訳も担当されています。すばらしい!

お二人とも関西ベースなので、あまり東京では聞くことがないですが、すばらしい演唱に魅了されました。合唱団とオケの間の位置どりなので、すこしオケに負けるかなと思ったんですが、とんでもなかったです。2階席にまで、よく飛んできました。

合唱も見事でした。Aufersteh'nの出だし、我々の時より全体に結構音量出てました。あの時は、歌詞は歌わなくていいから、ハミングしろとまで言われましたので。マエストロによって、えらく違うものです。終楽部のfffも立派に響いていました。

またオケが素晴らしかった!それにしても、楽器編成が愚亭がよく知る並びとは正反対だったのが興味深かったです。バンダも含めて10本のホルンは上手側、コンバスは逆の下手側、第2バイオリンは、第1の対抗、1バイオリンの隣はチェロ、それからヴィオラと。トランペットとトロンボーン・チューバを一般的な配置とは逆で、低音楽器が下手側という具合。

バンダは、完全にドアを閉めた状態の舞台裏でしたから、かなりこもった音質でした。パイプオルガン奏者はソリストと一緒に2楽章後に登場しますが、5楽章の最後の最後にしか弾かないので、かなり長いスタンバイになります。ソリスト登場場面で拍手が起きないのはいささか不思議に思いました。そう言えば終演後、ブラヴォーもまったくなかったです。愚亭もさすがに一人でやる勇気はなかったです。

最終部で鳴る鉦ですが、見ていたら、きっちり楽譜見て叩いていました。愚亭が乗った3/10のサントリーホールでのコバケン復活では、パーカショニストが乱打していたように見えたのですが、やはり一応のタイミングはあるようでした。この部分、マーラー先生、楽譜上、どういう指示を出しているのか興味津々です。

このホールのパイプオルガンはご覧の通り、実に見事なものです。世界に誇れるオルガンだと思います。しかも、モダンとクラシックの二つの異なる顔を持って回転しますからね。今日はモダンの出番で、演奏台もしっかりオルガンのスタイルに調和しています。みなさん、お疲れ様、Bravissimo!!!

「田園交響楽」@AmazonPrime

240406 La Symphonie Pastorale 仏 1946  1h48m  監督:ジャン・ドラノワ

ご存知、アンドレジーの同名原作を、戦後すぐにジャン・ドラノワが映画化したものです。ミシェル・モルガン繋がりで視聴することに。撮影時は25歳ということになります。確かにきれいですし、とりわけ吸い込まれるような瞳には参りますね。やや頭でっかちなのが惜しい!(笑)

でも、演技力はなかなかのものです。見えないときと、見えるようになってからの視線の当て方など、よほど研究したのでしょう。実に自然ですばらしいです。それと、ラストの死に顔のアップが強烈な余韻を残します。

ま、しかし、不道徳というのか、妙な話です。教会の敬虔たる牧師が、村で保護者に死なれて捨て子に近い状況にあった盲目の少女を気の毒に思い、自宅に引き取り、自分の子供たちと一緒に養育するのですが、美貌の女に成長すると、あろうことか恋心を抱くという、なんとも救いようのない話。

そのことを苦にしたジェルトルードと名付けられたこの娘、開眼手術が奇跡的に成功するのですが、ある雪の朝・・・。後味、すこぶる苦いです。

いやまあ、あまり気分のよい展開ではありません。映画としては、まあまあの出来なのでしょうが、時代を考えれば、こんなもんでしょうかね。1950年、日本公開時の反応はどうだったんでしょうか、気になります。

「わが父わが子」@AmazonPrime

240403 Untel père et fils (この父にして、この子あり)仏 1940 1h53m 監督:ジュリアン・デュヴィヴィエ主演:レイミュ、ルイ・ジューヴェ、ミシェル・モルガン

1889~1939の50年に亘る家族の物語。モンマルトルに住む一家、背景に映るサクレ・クール大寺院はまだ工事中です。

この一家の3代にわたるお話ですが、この時代なんとフランスは3度の大戦に巻き込まれます。したがって、この一家も常に巻き込まれ成人男子は従軍しては戦没か負傷するという運命なのです。

そんな中での、ありふれているけど、家族愛に満ち溢れ、情感に満ちた展開で、胸が熱くなります。

本作に出演したミシェル・モルガン、4作目の作品で、この時20歳。すでに大女優としての地位をほぼ確立しているようです。誘い込まれるような眼が印象的な女優です。

この作品の頃でしょうか、美貌が輝いています

酷かもしれませんが、これが晩年の姿。

これは、一昨年亡くなった愚亭の一番の親友、I君が若かりし頃、ミシェル・モルガン邸に招かれた際の写真。背景の絵はどうやらラウル・デュフィの作品のようです。