ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

炎のコバケン、魂の演奏!

f:id:niba-036:20100816212015j:image:leftうだる暑さの中、今日はサントリー・ホールへ。「未完成」「運命」「新世界より」とは、また何と贅沢な組み合わせでしょう。

今日の席は指揮者から見ると、丁度10時の方向。つまり、目の前にはホルン奏者が、そしてちょっと左には打楽器という位置。だから、聞こえ方は最悪。でも、おかげで今日も新しい発見がいくつか。興味深い経験が出来た。

「運命」と「新世界より」、大物二つの前の露払いが「未完成」という、なんともはや豪華な布陣。
コバケンの指揮ぶりは確かに「炎の」という形容詞がぴったり。

左斜め前から今日はとくと指揮ぶりを拝見したが、実に面白かった。まず、指揮棒は使うが、すべて暗譜。そして、何より驚いたのはフォルテッシモ部分にさしかかる時に発する、裂ぱくの気合いである。その位置では相当聞こえてくるのだが、正面側はまったく聞こえないでしょう。でも録音にはしっかり入ると思うな。それにしても、ウーンウン、ウンウーンと、最初は何の音かと。珍しい楽器でも鳴っているかと思ったほど。

また、目の前のホルンの音がとにかく大音響で聞こえるから、なるほどこんなところで、こういう音を鳴らしているんだ、という場面がしばしば。

新世界より」の第2楽章、長いコンバスのピッツィカートの演奏があるが、弱音器をつけ、弓は下に置いての奏法となることも初めて知った。またトランペットだが、最近はやたらロータリー式(バルブ方式)を目にするが、今日は「運命」はこのロータリー・トランペット、「新世界」は従来のピストン・トランペットで演奏。音のまろやかさ(運命)、鋭さ(新世界)と使い分けしていた。

同じ第2楽章のエンディング、第一プルトの8人の弦が優しく奏で、更にコンマス、主席チェロ、主席ヴィオラの3本に移っていくパートの美しさには陶酔させられた。そしてコンバスの低いピアニッシモで終了。

再び、コバケンの話だが、時に赤鬼のごとく棒を振り回すかと思えば楽章を終える度に、楽団員に優しく微笑みかけるし、演奏が終了すればそれこそ全員とも握手しかねないほど、一人ひとりに謝意を表すスタイルは珍しいし、印象的である。最後に聴衆に向かって、多分お礼の言葉だと思うのだが、二言三言、しかも冗談も言ってらしく、正面席の聴衆の笑いが聞こえたのだが、この位置ではほとんど聞き取れず、これは残念だった。

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